それぞれの四季

目標は「小さな巨人」/金才順


 不況と閉塞感漂う日本経済の只中で、同胞企業も切磋琢磨している。

 人員・経費削減・賃金カット…。他人事とは思えない暗い話が多い。そんななかでも自社のコンセプトを明確にして健闘する同胞業者に逢うと元気が出る。

 東京・日暮里のゴム靴底メーカーA社を訪ね、厳しい現状に立ち向かう同胞のパワーを感じた。

 同社は1世の代から意欲的に製品開発に取り組んでいる優良中小企業。

 70年代に開発した雪道でも履ける革靴底は、それまでの雪道イコール長靴かブーツという概念を覆し、スーツの下に革靴と言う画期的な変化をもたらした。業界の先駆けだ。

 それから30年、今、2代目を担う兄弟が「世界1軽くて通気性の良い靴底」を開発している。足の裏にフィットするデザインが何とも美しい。業界に大手や格安のアジア製品がひしめくなか、同社は高機能製品開発に力を注ぎ、数々の特許を取得、発明賞にも輝いた。勉強熱心で研究・開発に余念がない。

 不況を生き抜く製造業者の闘いは並大抵ではないと実感する。目標は業界の「小さな巨人」だ。

 そしてアボジの代から息子に継ぐ社訓は「他の3倍の努力」「斬新な創造性」である。その志が脈々と受け継がれている。解放後の困難で過酷な状況から日本で生業を起こし生きる術を見出した1世。苦境に打ち勝った人は強い。

 前の見えない大変な時だからこそ原点を見つめ先人の知恵に学ぶ。そして、発展継承へ。

 1世は様々な分野、色んな形で次代へのメッセージを伝えている。企業家も然りだ。(ジャーナリスト)

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