本の紹介
新版、「人間を見つめて」/神谷 美恵子著
人のいのちとは、人のこころとは
社会に出ようとする人たちに是非勧めたい1冊。著者は精神科医、思想家、大学教授、翻訳家としても高名。著書の「こころの旅」「生きがいについて」なども若い人たちの間で長年ベストセラーとなっている。 本書はひとりの精神科医として「病める人々」に接してきた著者が、その探求のあとをふり返り、生というものを問い直す過程を描いたもの。真しな思索と作業に胸を打たれる。 第1章は、生命を支えるものは何か、また、生物の中でも人間に特有なものは何かについて、第2章では、具体的な人間の生き方についていくつかの問題を拾いあげ、第3章では、人間をとりまく生存条件について思索している。病や罪や死や宇宙などという大きな問題は人間の領域を越えるものである。しかし、そういう背景まで考えなくては、自己のよって立つところを探り当てることができないのではないかという、問題提起である。 著者は語る。「男女を問わず人間に求められているのは自分がいま、どんな時代と社会に生まれあわせているのか、という認識と、男または女に生まれついたことへの覚悟であろう」と。 一生の間、道を求めて歩き続けるのが人間である、ということを自覚できる良書である。 |