心に残る本/元武寛さん

自然体で臨みつつ、常に問題意識を




(1)「ほんとうの私を求めて『在日』2世3世の女性たち」/(福岡安則、辻山ゆき子・新幹社)

(2「民族の共生をもとめて」/(対談=姜尚中・鈴木二郎・部落問題研究所ブックレット)

(3)「青春漂流」/(立花隆 著・講談社文庫)

 


 大学を卒業する前に、これからどう生きていくべきかを真しに考えるうえで参考にした3冊だ。

 (1)(2)を選んだのは「在日」を生きるということが、人生を現実にどう生きるかということと同義語となっていると思ったからだ。

 人は、心に残る本として一般的に絵本とか小説などの古典をあげるが、私のそれは留学同の活動をするにあたって在日の若者たちの心理を出来る限り把握しておきたいという、目的性を帯びたものだったので、とくにそれらが印象深く残っている。その過程で、やはり自分の生活と密接に関連した本を読むと、すらすら頭に入るものだなぁと実感したりもした。

 (1)は、自分が何者であるかを探し求める10人の同胞女性の対話集。ウリハッキョに通った女性、帰化した女性と様々であったし、彼女らは、実際には、その多くが成長の過程で日本人側の偏見と差別にぶつかり、アイデンティティの葛藤を体験している。また、彼女らを含めて同胞社会は、実に多様化し揺れ動いている。

 対話の中で、帰化した女性が「帰化しても朝鮮人として自然体でいたい。それが一番の幸せじゃないかなぁ」という指摘に胸打たれた。

 在日の若者たちが「自分は自分でいいのだ」と思えるような、そんな自分の位置を確認しあえるような場を提供していかねばと、思った。

 (2)は、「共生論」をめぐって2人の専門家の対談を収めたものだが、読み進むうちに「ちょっとまってよ。異質との共存、共生とかいっても日本の社会側がそれを受け入れる土台を整えていないし、対等な関係(在日朝鮮人と日本人)が形成されていないじゃないか。そんなに世の中、甘かないよって」と、意見を投げかけたりもした。

 ただ、(1)(2)を通して「民族=国家」というアプローチで、同胞社会を見るにはある種の限界にきているのではないかと、疑問を感じずにはおれなかった。

 一度は挫折し方向転換した11人の若者たちの群像を描いた(3)は圧巻だった。

 迷いや惑いの真っただ中にいても「やりたいことをやっているんだ」という彼らの力強さにぐいぐいひきこまれた。

 自然体で臨みつつ、常に問題意識を持って、情熱をかけて打ち込める仕事をしていこう――。私が読書を通して習得したのはこれにつきる。(留学同東京専任活動家、大田区在住)

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