春夏秋冬
北京で開かれた朝・日赤十字会談で、在朝日本人女性の第3次故郷訪問団が、4月5日に訪日することになった。が、正直なところ手放しで喜べない。というのは、何十年ぶりかで故郷に帰る彼女らを、果たして日本の世論が温かく迎えてくれるだろうか、という危ぐがあるからだ
▼朝・日会談がはじまった91年の秋、朝鮮で日本人妻を取材したことがある。彼女らは、国交が1日も早く正常化して、故郷に帰れるようになれば、と胸をときめかせ、親孝行できなかった分、一所懸命両親に尽くしたいと涙ぐんでいた。日本人妻のほとんどが、両親に反対されての朝鮮人との結婚、帰国だった
▼そのとき取材した日本人妻の1人が、2年前の第1次訪問団で訪日した。彼女は朝鮮での取材で「両親に温かいご飯を炊いてあげられなかった」と悔やんでいたが、故郷を訪れたときは、すでに遅かった
▼朝鮮には「アレッサラン」という言葉がある。愛情は親から子に注がれるという意味だ。彼女も同じ事を言いながら、両親との再開を楽しみにしていた。帰国する際、「やっと念願が叶いましたね」という質問に、彼女は黙って首を横に振っただけ。寂しさと苦渋の入り交じった彼女の目がすべてを物語っていた
▼これまで2回、在朝日本人女性の故郷訪問が実現したが、家族の大半は、名前を公表したがらなかった。理由は色々あるが、マスコミの偏向報道が、少なからず影響を及ぼしていることは事実だ。彼女たちが故郷に錦を飾る気持ちで訪日していることを、日本のマスコミは、もっと正確に伝えるべきではないか。(元)