現場からの意見(下)
崔雅絹 ハーモニー共和相談指導員
介護保険−介護認定
判定基準にばらつき、痴呆症状の人は低い判定に
サービスをフル活用できない恐れも
不安の声多く、相談ケース増える
不服あれば申し立てを
介護保険サービスを利用するには、寝たきりや痴呆などサービスを受けられる状態かどうかの認定(要介護認定)を受けなければならない。
市町村に申請すると、原則として30日以内に結果が通知される。
認定のための調査質問事項は、身体的状況に関する質問、痴呆症状による問題行動に関する質問など85項目からなる。
その結果をもとに審査・判定され認定に至るわけだが、徘徊(はいかい)や昼夜逆転、被害妄想などの問題行動のある痴呆者に対する認定が低く見られる傾向にあるという問題点が浮上している。
これは判定基準が、身体的介護にかかる時間がもとになっており、身体的には自立しているが痴呆のある高齢者は、その介助に要する時間が少ないと判断されるためだ。
訪問調査は、市町村の職員や、市町村から委託を受けた居宅介護支援事業者などの介護支援専門員が家庭などを訪問し、心身の状態などについて聞き取り、調査票に記入する。
訪問調査の方法のマニュアル作りや調査員の研修など、全国的に公平な認定をするための対策も取られていたが、訪問調査員によって要介護認定にばらつきが出ているようだ。
要介護認定には、一番低いレベルの要支援から要介護1〜5までの六段階がある。
私たちの判断では、明らかに車イスレベルで要介護3〜4で認定されると思っていたのに、要介護1〜2と審査されたケースが出ている。
要介護認定でこのようなばらつきが出ることについては、当初から憂慮されていた。
認定結果に不服がある場合は、都道府県の「介護保険審査会」に申し立てできる制度があると知らせている。
また要介護認定は、原則として6ヵ月ごとに見直される。
毎日の生活に関わってくる
当施設では、入所とともに通所サービス(以下デイケア)を実施している。デイケアは、徘徊などさまざまな問題行動のある人も多く利用している。
そしてその多くの人が、デイケアやヘルパー、訪問看護などのサービスを組み合わせながら在宅利用している。
このような人が、要介護認定によって判定が低く出た場合、今までのようにサービスをフルに活用出来ない恐れがある。実際、家族から、そのようなことを不安に思っている声が多く寄せられており、相談にくるケースも多い。
またなかには、痴呆症状もなく、身体的にも自立している人々が利用することもある。
彼らは、デイケアに来ることによって入浴、食事サービスなどを受け、また他の利用者との交流を楽しみにしており、それを生きがいに毎日生活していると言っても過言ではない。
例えば、それらの人々が身体的に自立し、特にサービスは必要ないと認定されると、たちまち介護保険サービスを利用することが出来なくなる。
そのような人に対して、市町村によっては独自でサービスを提供しようという声もあるようだが、彼らにとっては今後の利用がどうなるのか、毎日の生活に関わってくるだけに不安は隠し切れないようだ。