1月にオープンした「女性と仕事の未来館」
女性たちの可能性を応援


 働いている女性、これから働きたいと思っている女性たちに様々な情報やサービスを提供し、サポートしていこうと、今年1月に誕生した「女性と仕事の未来館」(東京・港区)。日本で女性のための総合的な施設が設立されたのは初めてのことだ。同館のシステムの紹介とともに、樋口恵子館長(評論家)に話を聞いた。

「心身」から資質向上まで、専門家がアドバイス
各種セミナー、イベントも開催

 JR田町駅から歩いて3分。都営地下鉄三田駅なら階段を上ってすぐ。オープンしてまもない「女性と仕事の未来館」は、自然光を取り入れたクリーム色の天井、吹き抜けの入り口ロビーは、まるで劇場を思わせる。財団法人「女性労働協会」(労働省許可団体)が管理・運営を担当する。

 1階が各専門家によるアドバイスを受ける相談室で、仕事をするうえで心と体、自身の質の向上など様々な分野に対する相談活動を実施している。相談には、女性法律家協会、日本女子医会や臨床心理士の専門家、そして「起業」を目指す人には税理士、中小起業診断士などがあたっている。時間は1人1回50分と充分に時間を取っている。

 子ども部屋などの施設も1階には備えられている。

 2階はライブラリー、展示交流サロンになっている。女性と仕事をキーワードにした3万冊に及ぶ図書・資料・雑誌が閲覧でき、インターネット端末やCD―ROM端末を使っての検索もでき、ビデオブースではビデオも見られる。

 3階は明治から現在にいたるまでの女性たちが働いてきた歩みの展示室(常設)、4階はホールやセミナー室が備えられており、入社10年前後の中堅を対象とした「キャリアアップセミナー」など各種セミナーや、能力開発プログラムを実施している。5階には健康ルームなどの施設もある。

 「女性が仕事についてあれこれ悩んでいる時に相談できる場所、集まれる場所として、また的確な情報を提供し、女性が自らの可能性を開いていけるよう応援したい」

 東京・港区に位置しているが、地域に限定せず誰でも利用できるし、さらに1人でも多くの人がサービスを利用できるようにインターネットで日本全国はもちろん、アジア、ヨーロッパなど世界の女性たちと交流、連携をすすめていく予定だ。 (金美嶺記者)

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樋口恵子館長に聞く
「自分を生かす」手助けに/国際交流NGOのネットワーク作り

 「未来館」の開設は、女性が仕事を持ちながら、働くことで社会に参加することを、国が肯定的にとらえはじめたというメッセージだと思っている。

 働くということを大上段に構えず普通に考えてほしい。そのなかで、自己実現のための自分を生かす道をみつけてほしい。

 だが、日本は経済的には先進国だが、男女の平等ということではまだまだ、後進国に入る。

 90年代に入って、ようやく男女雇用機会均等法、育児・介護休業法、男女共同参画法などが成立し、法制度は一応整った感はある。こうした歩みが、女性たちにセクシャルハラスメントを訴えるアクションを起こさせたと思う。

 90年代以降、企業への就職に限らず、普通の女性が仕事を持って、普通に社会との接点を持ち、自分の未来を切り開いていきたいとの志向性が強まった。

 こうした女性たちの意識の変化が、「未来館」のオープンに重なった。

 女性が本当の意味で自立するには、経済的な自立なしには語ることはできない。女性が経済的に自立することは、男女の関係においても同等の良い関係に変えることになる。

 日本の社会保障システムは、年金1つをとっても、夫あっての妻という構造になっている。女性は労働を支えてきた大きな力であるにもかかわらず、社会的に正当な評価を与えられてきたとはいえない。

 また、世界的にも21世紀には、高齢化社会を迎える。日本も3分の1は高齢者という時代が来る。女性は男性よりも長生きするのだから、このまま対策を立てず放置すると、「貧しいおばあさん」が増えることになる。

 女性が働くこと、仕事を持つということは、要するに豊かな社会を築くことにつながる。そう考えれば、働く女性を社会がサポートするのは、当然といえよう。「未来館」があらゆる問題に対応していける発信基地になればと思う。

 また、国際交流もしてしていきたい。21世紀は、世界人口の半分をアジアが占める。アジアの一員としてNGOのネットワーク作りもやっていきたい。

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