介護保険 4月1日からスタート、「現場から見た問題点」
                                 
崔雅絹  ハーモニー共和相談指導員


在日社会、サポート体制作り急ぐべき

 昨年10月から申請受付が始まった介護保険制度が、いよいよ4月1日からスタートする。大阪の老人保健施設、ハーモニー共和の相談指導員としてこの問題に当たっている崔雅絹さん(26歳)に、制度の実施と関連して在日同胞高齢者を取り巻く問題点について「現場からの意見」を聞いた。(文責編集部)

                                                                                                                       ハーモニー共和

チェ・アギョン

 1973年12月生まれ。神戸朝鮮高級学校を経て、四国学院大学社
会学部で社会福祉学を専攻。卒業後、大阪の共和病院で医療ソーシャルワーカーを務め、98年9月のハーモニー共和開設とともに相談指導員となり現在に至る。


軽減どころか逆増

 介護保険は無料ではない。その費用は、利用者の負担を除いた分の半分を税金で、残りの半分を保険料で負担する形になる。

 それゆえ無年金者がほとんどを占める在日高齢者は、介護保険でのサービス利用と引き替えに、大きな負担を強いられることになる。

 当施設の入所者は、6割が在日高齢者で、そのほとんどが無年金者である。

 介護保険の保険料徴収によって、その負担は軽減どころか今後、ますます増えることになる。

 当施設でも、経済的問題によって通所サービスの利用を中止せざるを得なくなった人も出てきている。

本名も名乗れず

 在日高齢者が介護保険制度のもとでサービスを受けた場合でも、様々な弊害が生じる。

 まず、日本人ヘルパーが作成したケアープランのもとでサービスを受けた場合(それがほとんどを占めることになるのだが)、朝鮮人と日本人の風習や生活環境の違い、よほど在日高齢者の歴史的背景や現在の置かれた状況を知ろうとする気持ちがないと、コミュニケーションがうまく取れず制度利用の継続が難しくなる。

 具体的には嗜好にあった食事の提供を受けられない、言葉が通じず、必要としている援助を受けられない、さらには入所サービスを受ける際、少数者となり、本名を名乗れなかったり、朝鮮民謡が聴きたくても声を大にして要求できないなどの状況が現実の問題として考えられる。

 実際に、特別養護老人ホームで本名を名乗れず、通名で生活しているケースを耳にしたことがある。

正確な問題把握を

 介護保険は、申請をしなければサービスを利用することは出来ない。

 そして介護保険の認定がおりてから、ケアープランをたてたうえでサービスを利用することになる。各施設や病院ではケアープランセンターを構えている所が多くあり、代行申請や、プランをたててもらったりしてもらえる。また認定に不服があれば不服申立制度がある。

 しかし、このようなことを知らない独居の1世や高齢者だけの世帯、家族もまだまだ存在しているようだ。

 介護保険導入を機に、その問題点を見極めるとともに、私たちがアンテナをもっと広げ、在日高齢者の抱えている問題を正確に把握し、サポートしていけるような体制づくりが重要である。

(詳報は10日号から3回にわたって連載する)


京都、三重など各地で説明会

 介護保険制度のスタートを目前に控え、同胞に正しい知識を身に付けてもらおうと、総聯や女性同盟の各地域支部・分会で福祉問題の専門家による説明会が相次いで開かれている。

 総聯京都・右京支部では、2月23日に「介護保険制度に関する右京地域同胞説明会」が開かれ、右京区役所福祉部介護保険準備課の児玉壽弘課長、大谷晃昭課長補佐、三輪幸司係長ら区の行政担当者が説明し、多くの同胞が参加した。

 説明会では、児玉課長が介護保険制度が生まれた背景、大谷課長補佐が制度の全般的な内容について解説。同胞からは「言葉が通じなかったり、交通の便が悪い地域の対象者については、介護サービスの申請手続を総聯支部で代行してくれるのか」「(介護を受ける)両親が他県に住んでいる場合、申請は自分が住む市や区で取り扱ってくれるのか」など、様々な質問が出た。

 同支部では今回の説明会を踏まえ、パンフレットの配布やアンケート調査などを行い、同胞高齢者がサービスを安心して受けられるよう便宜を図っていきたいとしている。

 また同20日には、女性同盟三重県本部の学習会で、京都同胞生活相談所の鄭禧淳所長が「同胞生活と高齢者問題」と題して講演した。

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