人種差別撤廃条約批准から5年
金東勲・龍谷大学教授に聞く
国際人権法と日本の人権
条約の順守を促す活動を/NGOが常に政府をチャック
人種差別撤廃条約を日本が批准してから5年になる。来年早々には、日本政府の条約順守状況をチェックする初めての審査が国連欧州本部で行われ、在日本朝鮮人人権協会でも来年1月にNGO(非政府組織)としてカウンターレポートを委員会に提出する。現在、日本は同条約を合わせて、子どもの権利条約など9つの国際人権条約を批准しているが、日本における国際人権法の研究家でもある金東勲・龍谷大学教授に、日本での人権状況や施策について聞いた。
民族教育の保障 過去の清算必要 ――日本が加盟した人種差別撤廃条約の実施状況をチェックするため各NGOはカウンターレポートを提出する準備をしているが 条約批准を法的な支えにして、NGOが日本政府に対し、常にチェック機能の役割を果たしていくことが重要だ。 世界人権宣言など人権条約の文言は、大変素晴らしいが、そうした文言を作る作業で終わってしまってはいけない。それをどう守らせるかがより大切だ。 条約を守らせるために人権規約委員会の場合は、政府に報告を提出させ、それを審査してチェックする。その作業でもっとも大切なのが、NGOのカウンターレポートだ。 レポートを作成するためには、当然、こちら側の準備も必要になる。ただ、非難するという方法ではなく、どの部分のどこに違反しているのかをはっきり指摘するという方法が必要だ。相手を説得するには、相手の論理を越える正当性のある論理で対処しなければだめだ。 ――国際人権法の観点から、日本の人権状況とその施策について 日本は、90年代に入ってやっと人種差別撤廃条約や、子どもの権利条約などに加盟した。日本は常任理事国入りを宣言するなど、大国をひょうぼうしながら、実は人権問題などへの取り組みで大変に遅れていた。しかし、私が国際法を専攻した当時(70年代)にくらべて、日本の状況はだいぶ変わってきた。ひとつは、外国人との共生は日本でも今や必然となっている。 例えば在日同胞が多く在住する大阪府などは、地域の話をする時、外国籍住民を排除して論議をすることが、もはやできなくなっている。だからこそ努力しだいで、在日同胞など外国籍住民の意向をかなえられる可能性が大きくなってきているとも言える。 もう1つは、人権に目を向けるNGOが増えたことだ。 だが、日本が批准している人権条約、例えば国際人権規約や人種差別撤廃条約などに鑑みた時、まだまだ不十分だ。 国際人権規約にてらした場合、人間は誰もが自己の文化を享有し、自己の言語を使用する権利を持っていることは誰も否定できない。だから、もっとも保障されるべきなのが、在日同胞の民族教育だと思う。だが、民族教育は日本の中で決して保障されているとは言えず、継続して厳しい状況におかれていると言わざるをえない。 在日同胞の間では、現在10%を越える子どもが民族教育を受けている。しかし、すべての民族学校は、学校教育法第1条に基づいて認可された「1条校」ではなく、各種学校として認可されているため日本の私立学校とは異なる差別的な取り扱いが行われている。 こうした差別的な扱いは、日本の単一民族国家観にもとづいた国民教育を目的とする学校教育法に根本的原因がある。だが、民族教育の設置認可は、国際人権規約と子どもの権利条約が求める教育の目的達成のためにも強く求められているのだ。その点からも民族学校出身の生徒に国立大学への受験・入学は早急に改善されるべきだ。 まず、朝・日の国交正常化、過去の清算は必ず必要だ。そして、これは日本にとっても決して避けて通れない問題だ。 日本は、21世紀における日本の立場をどうするのか、といったことをきちんと視野に入れるべきだ。 だが、日本の態度はどうもあいまいで、目先の不利益にばかり目を向けている。日本にとって百歩譲って、たとえ一時的に不利益に思えるようなことがあっても、それは長い歴史を通して見れば、決して不利益などではない。 南北に平和が定着し、そのなかで、朝鮮半島とどのような関係を築いていくのかは、今後日本が、東アジアでどのような立場を取っていくのかにもつながる。 そして在日同胞がきちんと日本にものを言うためにも、団体に関係なく、懸案の問題に共同で対処していくことが大事だ。(金美嶺記者)
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