共和国国籍取得の同胞ら、日本国籍離脱を求める
昨年7月に朝鮮民主主義人民共和国の国籍を取得した、日本国籍を持つ在日同胞13人が17日、日本国籍喪失届けを居住する市町の役所に提出。これが受理されなかったことを受けて同日、日本弁護士連合会(日弁連)に人権救済申立を行った。日本国籍を持つ在日同胞の共和国国籍取得・日本国籍喪失届け出・人権救済申立は、いずれも初めて。国籍離脱の自由は世界人権宣言で謳われ、日本国憲法でも保障されている基本的人権の一つ。法務省は不当にも国籍離脱を認めない立場だが、申立人らは訴訟などの手段に訴えてでも要求を貫く構えだ。(解説)
法務省は拒否の姿勢/日弁連に人権救済申立
日本国籍離脱を求めて人権救済申立に踏み切ったのは、5道県に住む10代から50代までの在日同胞13人で、全員男性。いずれも朝鮮人男性と日本人女性の婚外子として生まれた。
1人を除き朝鮮人の父から認知を受けているが、認知後6ヵ月以内に日本の法務大臣に対し国籍離脱届けを出さなかった。その結果、日本政府が外国人登録上の国籍欄の「朝鮮」「韓国」を区別せず、在日同胞に一律に適用している「韓国国籍法」(昨年改正)の規定により、朝鮮の国籍を「喪失」したとみなされた。
そこで総聯中央を通して共和国国籍の取得を申請したところ、昨年7月3日に共和国中央人民委員会(当時)が承認。これを受けて、日本の国籍法11条1項「日本国民は、自己の志望によって外国の国籍を取得したときは、日本の国籍を失う」に従い、日本国籍を離脱する意向を固めた。
しかし弁護団が法務省と折衝したところ、同省は、国籍法に言う「外国の国籍」とは日本が承認している国を指す、との解釈に立って、国交のない共和国国籍取得者の日本国籍離脱を認めない方針を示した。
13人の同胞らは、「自分の祖国を父の祖国である朝鮮と自覚し、強く日本国籍の離脱(喪失)を希望しても、それすらかなえられない」ことは「重大な主権侵犯であり、基本的人権の侵害」だと認識。「国籍法の抵触についてのある種の問題に関する条約」などを根拠に、日本政府には共和国国籍取得者に対し「韓国国籍法」を一方的に適用する権限はなく、未承認を口実に相手方国籍を否定することは、人間の持つ国籍取得権を不当に奪うものだとして今回の行動に踏み切った。
また申立においては、法務省がかつて、在日中国人の帰化申請において未承認の台湾当局が発給した国籍証明を認めていたケースについても指摘している。
申立後、弁護団と共に2人の未成年の申立人の父母が記者会見。日本人の母親(41)は、「子供たちには、朝鮮の国籍には日本社会での差別などデメリットもあることは説明してある。それでも難しいことを日本国籍でごまかさず、自分の父と、父から受け継いだ血を誇れる生き方ができればいいと思う」などと、今回の判断に至った経緯を語った。