16年ぶりにビナロン生産再開 国家の総力結集、工場の現代化実現 |
金正日総書記の連続的な2.8ビナロン連合企業所(咸鏡南道)への現地指導が伝えられた(7日発朝鮮中央通信と9日発朝鮮中央通信)。同企業所で16年ぶりにビナロン綿の生産が再開されたのだ。2年前から進められた設備の現代化工事が完了し、国内に豊富な石灰石と無煙炭を用いたビナロン綿を大量生産するラインが整えられた。
「朝鮮式」経済復興
ビナロン工場の現代化は、朝鮮の経済復興路線の方向性を示す典型例だ。その原則は他国に頼ることなく自国の経済土台に徹底的に基づき国家経済を発展させるというものだ。ビナロン工業の再生もこの原則にのっとっている。 李升基博士が自国の原料と技術によって確立したビナロン工業は、朝鮮の自立経済路線の象徴とされてきた。 しかし、90年代の経済沈滞期に生産ラインはストップした。それから16年間、繊維製品を生産できなかった。60年代に建設された設備は老朽化が進んだ。従業員たちは動かない機械を前に立ち尽くすしかなかったという。 07年8月、朝鮮のプライドをかけたビナロン工業の再生計画が始動した。総書記の現地指導があったのだ。 現場には「2.8ビナロン連合企業所改建旅団」と名づけられたチームが発足した。合成職場、アルデヒド生産工程など24の設備と建物の改修工事が始まった。 工事には、60年代にビナロン工業の第1世代が確立した工程をすべて生かすという総書記の意向が反映された。以降、総書記は5度にわたり現代化が進めらている工事現場を訪れた。 そのたびに工事のスピードは格段あがったという。10年の長期計画が5年に縮まり、さらには2、3年で完成できるまでになったという。 生活向上に直結 同企業所の生産正常化は人民生活の向上に直結する問題だ。ビナロンを生産する過程に生じる各種化学製品は軽工業などの原料となる。 金日成主席の生誕2012年に「強盛大国の大門を開く」という目標を掲げた朝鮮は、工業原料の確保を国内で解決しようとしている。ビナロン工場の現代化にばく大な資金が投じられたのもそのためだ。 工事は企業所の範囲を超え咸鏡南道が取り組む事業に拡大した。276町歩(1町歩=3千坪)の広大な敷地に巨大な化学施設を建設するぼう大な工事が繰り広げられた。 建設されたのは建物だけではない。ビナロン生産工程のCNC(コンピュータ数値制御)化が実現した。これによって、数千個の操作ボタンとバルブで操作した以前の作業が完全プログラム操作へと移行した。 労働新聞2月10日付は、ビナロンの大量生産が再開された意義について「主席のチュチェ的な工業建設思想の勝利」であり「朝鮮式を具現して前進するわが国の気概を示した事変」「人民生活を転換させる確固たる展望を開いた大きな成果」だと指摘した。 「主席の元へ」 国内メディアは今回の成果を大々的に宣伝している。 労働新聞には、16年ぶりにビナロン製品が生産される現場に立ち会った総書記が、「主席がこのビナロン綿を見たらどんなに喜んだことだろう。朝鮮の労働者たちが作った新しいビナロン綿を主席の元に届けよう」と述べ、自身の車にビナロン製品を載せたというエピソードが紹介された。 ▼李升基(1905〜96年) 全羅南道潭陽郡生まれ。日本の大学で自然科学を学び、1939年に世界でナイロンに次ぐ2番目の合成繊維ビナロンを発明した。ビナロン工業化に向けた研究を始めたが、日本の軍需産業に協力しなかったため逮捕された。 祖国解放後、ソウル大学工科大学の教授、学長を歴任。朝鮮戦争の最中に越北し、ビナロンの研究を行いながら工業化を確立した(61年5月にビナロン工場竣工)。61年2月から晩年まで科学院咸興分院の院長として活動。 ビナロンとは? 石灰石と無煙炭から得たカーバイトを原料とするポリビニールアルコールによる合成繊維。李升基博士が発明したビナロンは、金日成主席の指導によって1960年代に朝鮮で工業化された。 「ビナロン」という名称は主席が命名した。発明当初はポリビニール系アルコール繊維と学名で呼ばれた。「ビナロン」は朝鮮で古くから木綿を織るときに使われた「ナルシル(生糸)」に由来する。 ビナロンは天然繊維に比べて強く、天然繊維と混ぜて織れば良質の布を製造できる。とくに羊毛などと混ぜて織ると、それぞれの性質が有機的に結合し高品質の衣類用の布となる。今回、現代化された2.8ビナロン連合企業所を現地指導した金正日総書記は現場で、ビナロン綿は木綿や羊毛にも劣らない立派な織物の原料であると述べた。 【性質】綿に似た風合いの繊維。合成繊維の中で唯一、親水性のある繊維で吸湿性がよく、強度が高い。海水の中でも腐食せず、カビも発生しない。耐熱性があるが、燃えても有毒ガスは出ない。熱伝導が低いため保温に優れている。 【用途】衣類用の布を織るのに多く利用される。ほかにも帆布、テント、紡錘布、魚網をはじめタイヤ、ベルトなどの工業用繊維としても使用される。合成紙の原料にもなる。 [朝鮮新報 2010.2.23] |