自由権規約委員会に参加して |
国連・自由権規約委、総括所見を採択 日本軍「慰安婦」、無年金、朝鮮学校差別問題など
10月15日から16日にかけて、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で「市民的及び政治的権利に関する国際規約」の実施状況に関する日本政府報告書の審査が行われ10月31日、自由権規約委員会(HRC)で総括所見が採択された。日本から多くのNGOが参加したが、私も在日本朝鮮人人権協会(人権協会)の一員として現地でいくつかの活動を行った。 委員会に働きかけ
審査ではHRCが事前に提示した質問事項に対する日本政府代表からの報告、それに対するHRCからの質問、そして更なる質疑応答が行われた。HRCに対して日本での人権侵害状況を知らせるために、各NGOは事前にレポートを提出し、それに基づき審査で検討される課題が作成される。 著名な法律家や学者によって構成されるHRCだが、提出される情報量は膨大で、それを限られた時間内に行われる審査に反映させるのはとても困難であるため、NGOは審査1カ月前に簡潔なアップデートレポートを提出する。 日本審査の場合、非常に多くの市民団体やNGOからの情報提供があり、また直接参加した活動家も60人に達したため、審査前にNGOとHRC委員との意見交換会が行われた。 人権協会は朝鮮学校に対する助成金問題などについて、また今回直接参加できなかった京都の「エルファ」に代わって、同胞高齢者、障がい者に対する無年金問題について言及した。 審査の最中にも休憩時間などを利用してマイノリティー問題担当の委員に直接働きかけ、助成金格差や差別的な課税措置、そして朝鮮学校が自動車学校などのような各種学校としての認可しか受けていないことなどについて伝えた。 彼女はマイノリティーを保護する責務を果たさない日本政府に対して、「(日本政府は)朝鮮人になるためには、(自動車運転免許を取得するためのような)職業トレーニングが必要だと思っているのかしら?」と、皮肉を込めて話していた。 34項目に言及
1998年以来10年ぶりとなる今回の総括所見では、34項目に及ぶ評価や勧告がなされている。朝鮮人に関する問題としては、「慰安婦」問題、同胞高齢者及び障がい者無年金問題、そして朝鮮学校に対する助成金問題が言及された。 「慰安婦」制度の問題に関しては、被害者への謝罪、生存する加害者の訴追、この問題に対する教育の実施と事実を否定する者の処罰が記されており、「慰安婦」問題などなかったと主張する日本の政治家たちの言動は、継続する加害行為であるという、国際社会からの強い警告として読み取れる。 国民年金制度から差別的に排除されている同胞高齢者、障がい者に対しては、迅速な措置を講ずるよう述べられており、審査の場においても提出されたレポートに基づいて、委員から非常に具体的な質問が日本政府代表に投げかけられた。ことの緊急性が委員の中でも共有されたのだろう。 また朝鮮学校に関しては、朝鮮学校に対する助成金が一般的な学校への助成金よりも著しく低く、従って私的な寄付金に依存せざるをえないにもかかわらず、それに対しても差別的な課税が適応されていることに対して懸念が表明された。 国の助成金を増額し、寄付者に対して他の私立学校への寄付者と同様の財政的利益を与え、適切な財源を確保し、また朝鮮学校卒業資格を直接的な大学入試資格として認めるよう勧告がなされた。全国の同胞たちによる署名活動や、今年3月に日弁連がこの問題に関して行った勧告も大きな役割を果たしたように思われる。 活動を通して 審査の場で日本政府代表の発言を初めて目の当たりにしたが、従来の発言を繰り返し、通訳者に対する考慮を装いながら、自らに不利な質問を封じ込めようと時間稼ぎでもするように、非常にゆっくりと答弁する態度には憤りすら覚えた。 日本政府代表の遅慢な発言にしびれを切らしたのか、通訳者から「動詞が出ないと通訳できない」、即ち、通訳者のためにも普段どおりのスピードで話すようクレームが出るひとこまもあった。日本語を英訳する場合、通訳者は動詞を聞き取らないことには前に進めないのである。 制限時間内にすべての項目に対する審査がなされないのではないかと心配したが、NGOからの働きかけや委員会の考慮により審査日程が半日延長され、すべての項目に対する審査が行われた。 活動を通して感じたことは二点。一つは会議に直接参加し、人的な接触を通して情報を発信していくことの大切さである。直接的な被害者が現地に赴き現状を訴えれば、いっそう有効的であろう。 もう一つは朝鮮大学校の教員として、言語能力や諸知識を同胞たちの権利と幸福の実現のために活用できる人材をしっかりと育成せねばならないということである。 筆者自身のスキルアップもさることながら、学生たちが自らの役割をしっかりと認識し、いっそう勉学に励むことにより同胞社会に大きく貢献できるよう、共に尽力していきたい。(廉文成、朝鮮大学校外国語学部助教) [朝鮮新報 2008.11.11] |