〈強制連行犠牲者遺骨問題〉 日本政府 遺族の入国拒否、北側遺族ら「骨身削られる思い」 |
「世界に類例ない人権侵害」 真相調査団などが撤回要求 朝鮮人強制連行犠牲者の遺骨問題で、日本の市民団体と宗教団体が集会の開催にあたり北南朝鮮から遺族を招請していたが、日本政府は北側遺族の入国を拒否した。遺族の入国拒否は解放後初めてで、非人道的な対応に非難の声が集中している。 法務省、不当な言いがかり
日本法務省入国管理局入国在留課の職員は24日、朝鮮人強制連行真相調査団に北側遺族の「入国拒否」を通告してきた。法務省側は「人道上、特別に配慮すべき事案ではない」(朝日新聞25日付朝刊)、「入国の主たる目的である集会参加ということが入国を認める人道的事由があるとは認められない」とし、日本政府の見解だと述べた。 入国拒否された金勇虎さん(69、平壌在住)は、本紙平壌支局の取材に対し「日本当局は2度もわれわれの入国を妨害した。人間の初歩的な道理も知らない日本当局の行為に骨身を削られる思いだ。世の中にこれほどの悲しみと苦痛はないだろう」と悲痛な思いを語った。 金元鏡さん(64、平壌在住)は「日本当局がわれわれ遺族の入国を拒否した真の目的は、日本国家の特大型過去犯罪と、それに対して60年以上謝罪と補償を避けてきた自らの反人倫犯罪の真相が日本と国際社会に広まるのを防ぐことにあるのだろう」と指摘し、日本政府の謝罪と補償、遺骨の返還を強く求めた。 遺族らが参加することになっていた集会「韓国、朝鮮の遺族とともに−遺骨問題の解決へ2006夏」は、日本の平和市民団体と宗教団体が共同で開催。28日から約1カ月にわたって北海道から鹿児島まで約30カ所で集会を開く予定だ。遺骨問題解決に向けての取り組みとして、遺族の生の声を聞くため北南朝鮮から約20人の遺族を招請していた。なかでも北側の遺族のうち2人は父親の遺骨と初めて対面することになっていた。 調査団、国連に通報 この問題で、集会の全国実行委員会と朝鮮人強制連行真相調査団は25日、東京で記者会見を行った。 記者会見では、調査団朝鮮人側中央本部代表の高徳羽・総連中央副議長が談話を発表した。談話は、植民地支配と侵略戦争の加害国が被害国の遺族の入国を拒否することは解放後初めての暴挙、世界的にも類例のない非人道的かつ重大な人権侵害であり、朝・日平壌宣言の精神にも反すると指摘。今回の対応を撤回し入国を認めることを日本政府に求めた。 調査団は、この問題を即時に国連人権高等弁務官に通報した。 全国実行委員会の共同代表で、6月に訪朝し遺族らと面会して証言を聞いた清水澄子氏は「父の帰りを待っていた家族たち、遺骨を祖国に持って帰ろうとする遺族たちの願いを思うと胸が痛い」「日本政府が過去の清算に真剣に取り組む一つの機会になればとの思いで取り組んできたが、入国を拒否するとは許せない。日本全体として真剣に考慮すべき重大な問題だ」と述べた。 「国庫に供託」も判明 入国拒否された北側の遺族3人のうち金元鏡さんと金勇虎さんは、2004年にも日本で開催された追悼会に招請され、遺骨と対面するはずだった。この時は入国許可がおりたものの、同行者の入国が拒否されやむをえず来日を断念した。 2人の父親はともに、旧日本軍の軍属として強制連行され南方の戦場で犠牲となった。金勇虎さんの父親は、靖国神社に無断で合祀され、祐天寺(東京都目黒区)に安置されているとされていた遺骨が偽物だったことが2004年に判明している。 もう一人の遺族の申金女さん(75、咸鏡南道在住)は、婚約した夫が愛知県半田市の中島飛行機半田製作所に連行され、左手の手首から先を失い、耳も聞こえなくなりながらも何とか帰国した。金勇虎さんの父親と申金女さんの夫については葬祭費や未払い賃金などが日本の国庫に供託されている。 日本政府は2001年にも朝鮮の強制連行関連団体職員の入国を拒否している。いずれも小泉政権下であり、安倍晋三官房長官(2001年は副長官)の意向によるところが大きいと指摘する専門家もいる。 安倍官房長官は25日午後の記者会見で、法務省が入国拒否を通告したことに関し「北朝鮮のミサイル発射に伴い決定した(制裁措置)9項目に該当する。人道上も人権上も問題はない」と強弁した。 「政治問題と人道問題の区別すらつかない政治家が過去の清算を遅らせている」と、朝・日関係のさらなる悪化を危惧する声が挙がっている。(取材班) [朝鮮新報 2006.7.27] |