〈東アジア共同ワークショップ〉 外国人問題に目向ける大切さ |
2004年度、夏の東アジア共同ワークショップ(主催=東アジア共同ワークショップ実行委員会)が8〜12日にかけて大阪を中心とする関西地方で行われた。夏のワークショップは8回目で、今年は在日朝鮮人などが多く住む大阪市生野区や京都・東九条、ブラジル、ベトナム人が多く住む神戸、朝鮮学校や建国学校、民族学級などを訪れた。また、「東アジアの未来への提言」と題した李鍾元・立教大学教授の講演、学習会、全体討論会、ライブなども行われ、参加者らは交流を深め合った。9日に行われた「神戸チーム」のフィールドワークに同行した。 裏の世界に目を
神戸チームのフィールドワークには在日コリアン、南朝鮮の大学生、日本人ら17人が参加した。一行は、東大阪朝鮮初級学校(東大阪市)を出発し神戸市営電鉄の上沢駅へ。神戸在日韓国、朝鮮人児童生徒保護者の会代表の金信繧ウんと部落解放同盟番町支部書記長の滝野雅博さんも講義のために合流した。 初めに訪れたのは、神戸電鉄敷設工事・朝鮮人労働者の像。誰の目にもとまらないような場所にある。ここは約1500人もの朝鮮人が過酷な労働を強いられ、5回の労働災害で13人が亡くなったと言われている。 全長53.8キロメートルにもおよぶ鉄道工事は建設機材などをほとんど使わずに、全工程を約3年間で開通させた。 「在日朝鮮人や日本人たちの地道な活動で96年にモニュメントが建てられた。神戸は港や異人館などの華やかなイメージがあるが、裏の世界に目を向けると、このような場所もあるという事を知ってほしい」(金代表) つづいて長田区の部落「番町」を訪れ、滝野さんから説明を受けた。昼食後、金さんから長田区で開設された民族学級についての講義、(株)シャープの金錫東社長(西神戸青商会会長)の案内でケミカルシューズ工場を見学した。 長田区はケミカル産業発祥の地で、全国でもトップシェアを占める。この地でのゴム工業が在日コミュニティーを形成し、そこからケミカルシューズが誕生した。労働条件のきわめて劣悪なゴム工場に集まった朝鮮半島出身者ら1世が作り出した在日独自の産業だ。 「この地域にどれだけの在日外国人が働いているのか」という質問に金社長は、「わが社で働くほとんどが在日コリアン。外国人もいる。それだけ働き口が少ないからだ」と語っていた。 差別、あらゆる場面で たかとりコミュニティーセンター内にあるFM放送局「FMわいわい」を訪れた。95年1月17日の阪神大震災時、神戸に住む外国人らが言葉が通じず、情報が得られない状況におちいった際、それを打開するためにボランティアの手で開局された。朝鮮語、ベトナム語、ポルトガル語など8つの言語を地上波に乗せ、インターネット放送も行っている。
ここではベトナム、ペルー、フィリピン人の女性3人に話を聞いた。 登場してもらったのはNGOベトナムin神戸代表のハ・ティ・タン・ガさん、ワールドピースコミュニティーの大城ロクサーナさん(ペルー人)、AWEP(アジア女性自立プロジェクト)の林マリアさん(フィリピン人)。 大城ロクサーナさんは、「ペルー人が日本に来てからまだ約13年と年月は浅い。最初の頃は日本に慣れるのに必死な親たちが子どもを野放しにした結果、子どもたちが自国の文化や言葉を覚えずアイデンティティーもなくしてしまった。今はそうならないように親たちも努力し始めた。アイデンティティーをなくすと、親と子どもがコミュニケーションを取りにくくなる。自分たちの世代はなんとかしなくてはと思い、家庭での教育をしっかり施している」と語っていた。 子どもたちにアイデンティティーを確立させる事や国籍の問題など、定住外国人らが抱える問題はさまざま。日本での差別があらゆる場面で生じている事に、参加者らは驚きを隠せないでいた。 初めてワークショップに参加した立命館大学院1年の朴伸次さん(24)は、「在日コリアンだけでなく、その他の在日外国人らの問題にしっかりと目を向けることも大切だ」と語っていた。(金明c記者) (関連記事) [朝鮮新報 2004.8.21] |