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「海女のリャンさん」上映会が盛況、苦難に打ちかつ明るさに魅了

 解放前、済州島から日本に渡り、海女をしながら生計を立て、朝鮮の北、南、日本に離ればなれになった息子や娘との絆を守り続けた梁義憲さん(87)の生活を記録した長編ドキュメンタリー「海女のリャンさん」が、日本各地30カ所以上で上映されている。在日同胞はもとより、日本各地の市民、女性、学生らの間で大きな話題となっており、上映会はどこも盛況。そんな1つ、7月10日、女性同盟東京・足立支部主催で開かれた上映会(3回)をのぞいてみた。

映画「海女のリャンさん」から

 「海女のリャンさん」が上映されたのは、足立区男女参画プラザ「Lソフィア」。多くの人たちがより多く来場できるように開演時間を2時、5時、7時30分と3回に分けてきめ細かく設定。女性同盟足立支部沈裕子副委員長は「苦難に満ちた朝鮮近現代史を乗り越えてたくましく生きたハルモニの生き方を、世代を越えてたくさんの人たちにぜひ観てほしいと思い、支部で何度も話し合って、いろいろ工夫をしました」と胸を張る。

 まず、映画のチラシをほぼ3カ月前に制作、12の分会に配り、徹底した宣伝活動をした。そのうえで全分会とオモニ会で360枚のチケットを販売。手応えは上々だった。さらに日本の市民や、民団婦人会、ニューカマーの人々にも広く観覧を呼びかけ、焼肉屋、美容院、クリーニング屋、ビデオ屋、キムチ屋さんなどにチケット販売を依頼。その傍ら、映画招待券を持って区議や各中学校、都教組足立支部などにも足を運んだ。また、朝鮮新報や日本のメディアの催し欄に紹介記事が載るようにした。

 その積極的な活動の結果、NHK、TBSの取材を受けることにも。さらに当日は分会、支部で送迎バスを準備、高齢者や子育て中の女性たちへの気配りも忘れなかった。

 こうした女性同盟支部の一丸となった取り組みの結果、455人(日本市民180人、ニューカマー30人を含む)が観覧する大盛況となった。

足立の上映会に集まった人たち

 この日、上映会に3回とも出席、夜開かれた打ち上げにも顔を出した桜映画社の原村政樹監督は「こんなに多くの人たちに観てもらって監督冥利につきる。とくに1世のハルモニたちが、映画の主人公と同じ場面で泣き、笑っている様子に感激した。きっと観た人もリャンさんと同じような体験をなさったことだろう。この映画で、1人の母親の視点から日本の犯した戦争の惨さ、冷戦の爪痕がいかに長い間、庶民に多大な犠牲を強いるかを伝えたかったが、深い共感を持って受け止めていただき、うれしい」と語った。

 映画を観た後、約60通の感想文が寄せられた。恨み言は口にせず、ひるまず明るく生きるリャンさんへの共感が圧倒的に多い。

 「人を非難せず、自分の境遇を嘆かず、苦難の生活の中で、夫を支え、どの子にも深い愛情を注ぎ、働き続けたリャンさん、何という深い大きな人柄だろう。リャンさんの人生がずっしりと重く日本人の私の胸にこたえた。1人でも多くの日本人にこの映画を観てほしい。すばらしい記録映画。一日も早く、南北統一の日が来ることを祈っている」(足立区、野地友子、70代)

 「済州島4.3事件を体験した私のハルモニだけじゃなく、全在日同胞女性の姿と重なり涙が出た。これはとても大切でありがたいドキュメンタリー映画だと思う。苦労が絶えない母をかわいそうに思い、父が情けなくうつった子供にそうじゃないことを諭じたリャンさんは何とりっぱであろうか。今日があるのはこの夫婦のように純粋な、本当の愛国者のおかげだと思う。帰国船のシーンは複雑な思いで観た。笑いあり、涙ありの生き方を観て私もリャンさんのように明るくたくましく生きたいと思う」(許峯子、松戸市、40代)

「海女のリャンさん」について上映後、語り合う日朝の女性たち

 リャンさんの「闘いの半生」とおおらかな愛。映画を観ながら感動のあまり 「泣きっぱなし」だったという人も多い。

 「リャンさんのパワフルさ、力強さ、愛の深さ、骨身を削って子供たちを育てあげた姿に、同じ女性として尊敬する。『時代のせい』と言っていたが、そう思わなければあきらめきれなかったのだと思う。『時代のせい』と言わないですむ時代になってほしいと思う。日本人は在日の人たちのことや歴史も知らない。これではダメだと思う。互いにわかりあえる関係になれるようにしなければと思う」(横山やよい、越谷市、40代)

 この映画で日朝関係の本質を知ったという声も多かった。「今、あまりにも表面的に朝鮮、韓国をとりあげ、朝鮮を敵視する風潮が強いなかでこの映画が上映された意義は大きい。朝鮮学校がなぜ、できたかがよくわかった。今の在日コリアンや北朝鮮をめぐる問題の本質は、やはり日本の植民地支配や米国の介入などがあると思う。まだ、戦争は終わっていない。そして、表面的なことだけで戦争や差別を取り上げるのではなく、本質は何かを明らかにする視点を与えてくれた」(田中健一、川越市、20代)

 一方、足立区に住む同胞男性からは次のような意見が寄せられた。「女性同盟が企画した映画会ですごく元気をもらった。足立の女性同盟の思慮深さ、研究熱心さ、日本人と共に朝鮮を理解するうえですごく助けになり感謝している。どうしてこんな企画を総連はやらないのだろうか。女性の繊細で大胆な展開力にバンザイ! ご苦労さま!」(粉)

愛しています ハルモニ

[朝鮮新報 2004.7.30]