朝鮮学校、今年度から新教科書 |
暖かい春の訪れとともに朝鮮学校の新学期がスタートした。既報のように、今年度から新カリキュラムにともない10年ぶりに改編された教科書は、@しっかりとした民族自主意識、質の高い民族的素養を備え、在日同胞社会に対する正しい歴史認識と主人公としての自覚を持ちながら、北南朝鮮、日本や国際社会で活躍できる資質と能力を備えA仲むつまじく豊かで力ある同胞社会を築くことができる人材の育成を目指している。 初級部から改編 新しい教科書は@朝鮮歴史、国語、社会、音楽、美術など民族性を育てる科目を充実させA科学技術の発展、情報化社会への移行に合わせ理数、情報化教育を強化しB日本・国際社会に能動的に対処できるよう北南朝鮮、日本と世界に関する知識をより幅広く取り上げた−点が特徴だ。
どの科目にも時代の流れと同胞のニーズが顕著に反映されているが、なかでも代表的なのは国語(朝鮮語)、朝鮮歴史、社会の3科目だ。 国語は、口語教育(聞くこと・話すこと)を決定的に強化。初中高全体を通して授業内容の30%以上を口語教育に割きながらも、読み、書き技能を含めた言語の4技能を総合的に高め、児童、生徒がより身近に活用できる「生きた朝鮮語」を学ぶことが可能な教科書に改編された。 また初中高を通して豊かな民族性を育てる教材を多く取り入れた。初級部では「トルチャンチ(1歳のお祝い、初1)」「チェサ(祭祀、初5)」など、在日同胞社会の生活場面を紹介したものや、「沈清伝(初5)」「雪竹花(初6)」など朝鮮の民俗や古典、伝記などを新しく盛り込んだ。初1(上)の絵教材では、教材ごとに保護者用の指導項目を設け、家庭でも国語教育が強化できるようにした。 初級部6年、中級部2、3年で科目名が統一された「朝鮮歴史」は北南朝鮮、海外の同胞が共有できる「統一教科書」を目指した。1920年代から45年の祖国光復までを扱った中3教科書を例にみると、抗日パルチザン闘争を基本にしながら、日本の植民地支配時に国内外の各地で展開されたさまざまな民族独立運動を具体的に取り上げている。 同教科書ではまた、植民地支配時の独立運動家として、李東輝、呂運亨、洪命熹、許憲、金九、李奉昌、尹奉吉、プロレタリア国際主義者として朝鮮と深く関わった中国人の魏拯民、周保中ら、文化人として作家の韓龍雲、李箕永、韓雪野、金史良、尹東柱、作曲家の洪蘭波、映画監督の羅雲奎、舞踊家の崔承喜、歴史学者の鄭寅普、社会経済史学者の白南雲、言語学者の李克魯、科学者の李升基、桂應祥、ベルリンオリンピックマラソン(1936年)で優勝した日章旗抹消事件の孫基禎らを扱う。 前回93〜95年の改編で、初3から高3までの全学年に導入された「社会」はすべての教育課程で南朝鮮社会と統一問題を扱ったのが特徴だ。南朝鮮を「6.15北南共同宣言」に象徴される統一をめぐる新しい情勢を念頭に置き、統一のパートナーと位置付け、客観的な知識を与える。京義線連結に象徴される北南間の経済交流、離散家族の再会、総聯同胞の故郷訪問、ソウルで公演する朝鮮学校児童、生徒の様子など民族和解の動きも写真入りで生き生きと伝えている。 従来通り学校、家庭など身の回りの問題から民族や祖国、在日朝鮮人社会、国際社会について扱うのはもちろん日本の地理、歴史、政治、経済、文化の学習についても引き続き多くの時間が割かれている。 改編は初級部から順次行われ、06年度まで進められる(全118点)。 「週5日制」導入 朝鮮学校では、土曜日を補習授業、民族性、社会性を育むための課外活動、課外授業などにあてる「週5日制」を今年度から導入した。月に1度の土曜日のみ休校する(幼稚園、幼稚班は除外。休校日は各地方本部ごとに制定)。 「5日制」への移行に伴い、授業時間が従来に比べ初、中は基本的に週2時間、高級部は週3時間減ったが、科目の効率的な統廃合、副教材の有効活用などを通してすべての科目で従来の水準を維持することに努めた。例えば「算数」科目では年間総授業数は1011時間と、日本の小学校(1〜6年)の869時間に比べて142時間も多い。 高級部は高2から文系(가(カ)班)、理数系(나(ナ)班)、商業班に分けていた学級編成を文系、理数系とし、選択科目にも幅を持たせた。これらは各学校の裁量で独自に設ける。 (関連記事) [朝鮮新報 2003.4.7] |