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見てみよう!こうして作られる教科書

 2003年度から朝鮮学校のカリキュラムが新しくなり、教科書の内容も10年ぶりに大幅に改編されます。今年度は初級部を中心に、以後、中級部、高級部と06年度までに合計118種の教科書が作られます。新しい教科書には、情報化、国際化という21世紀の流れに対応し、かつ統一祖国を念頭に置きながら、日本で同胞社会を守り、しっかりとした民族意識を持った子どもたちを育てていきたいとの同胞学父母らの思いが反映されています。新教科書の内容の特徴についてはすでに本紙で特集しました。今回はその教科書がどのようにして作られているのかを見てみましょう。今回、新教科書を作るうえでの技術的な大きな特徴は、「自前の機械を使って作成していることと、デジタル化という点」だと、教科書編さん委員会事務局長で、出版を担当した学友書房の宋都憲・副社長は語っています。それでは教科書ができるまでの過程を見ましょう。(羅基哲記者)

教科書編さん委員会

 教科書の作成過程はまず、教科書編さん委員会というところで教科書編集の方針を決め、資料を集めて執筆に取りかかります。

 前回の編さん事業は、10年前に行われました。今回はその後の新たな研究を踏まえて、1999年に発足しました。メンバーは、朝鮮大学校教員をはじめ、現場の各地の初中高級学校教員、学友書房の職員たち約180人になります。

 委員会では国語、社会、歴史、地理、数学、情報など17の分科に分かれ、それぞれの教科書のカリキュラム、教科書の内容について他の専門家の意見も取り入れながら、どのようにまとめるかという検討を進めてきました。

 当初は部分的な改編という意見もありましたが、21世紀に生きる同胞の子どもたちが日本はもちろん、北南朝鮮、国際社会を舞台に力を発揮できる民族性と実力を育てるために、全面改編することになりました。

 こうした研究、討議の過程を経て執筆へと進むわけですが、教科書の内容(原稿)については、「分科別に各委員が研究したものを全体で検討するという過程を多い時では5〜6回繰り返した」(宋事務局長)ものもあったそうです。

 執筆された原稿は、最終的に学友書房の編さん局にわたり、次の工程へと移ります。

 原稿は編さん局で再チェックした後、出版局へと行きますが、その途中で、教科書の内容をわかりやすくするために、内容に沿った写真やイラスト、図表などが作成されます。初級部の教科書では、1ページにひとつは写真やイラストなどが入るよう心がけたそうです。

イラスト

 イラストは、学友書房の専門家たちが制作しています。
 ひとつのイラストに付き、大きなものは3週間〜1カ月ほどの制作期間を必要とします。

 かつてはすべて手書きでしたが、今はすべてコンピューターで作成しています。担当者の朴枝憲さん(42)は、「写真のイラストは初級部1年の日本語の教科書の表紙で、立体感を出したのが特徴です」と語っています。



写真

 写真は学友書房の専門家が撮ったものなどを使用しています。近年のデジタルカメラの登場により、使われている写真の90%は、デジタルカメラで撮影したものだそうです。

 撮影は日本だけではなく、朝鮮でも行われました。今回の教科書を作るにあたって、合計2カ月ほど朝鮮に滞在し、景色や子どもたちを撮影したと言います。

 担当者の宋哲佑さん(52)によると、撮影で難しかったことは、楽器の教科書に使う写真で、「ピアノを弾く子どもの手の丸み具合や、演奏姿勢、民族楽器の持ち方など、そうした専門知識も必要だった」そうです。

 また、多様化する日本の社会現状を示す写真も「手をやいた」と語っています。

 こうした作業を経て撮られた写真および制作されたイラストは次に、出版局へと行きます。

出版局

 出版局は現在、すべてがコンピューター化され、集計された原稿、イラスト、写真などはデジタル処理し、製本の前段階まで持っていきます。ちなみに図表なども出版局で作成されています。

 出版局はかつて、すべてのことを手作業で行っていましたが、コンピューターをはじめ、印刷の元となるフイルムを作成する出力機を導入したことにより、それまでのすべての工程を自力で補うことができるようになりました。日本で、幼稚班および幼稚園から初中高級学校、大学まで体系化された教育システムを整え、教科書まで作るということは世界に例を見ないことです。

 出版局では集められた写真やイラスト、原稿などをどのように配置するかという、レイアウトという作業を行います。教科書の「設計図」といったものです。ここでようやく、1ページごとの顔作り≠ェ始まります。

 この作業はひとつの教科書で、例えば100ページなら100回行います。そしてそれを教科書を開いた時の見開き状態で、仮印刷し、校正およびでき具合などを確認します。

 次に、「面付け」という作業が行われます。完成した教科書も一つひとつバラバラにしてみると、1枚の紙に8ページ分が印刷されています。それがうまく重なって、1冊の教科書となるわけです。

 こうした工程を何度も繰り返して、教科書に掲載される内容(データ)が、コンピューター内の1つのファイルに収められます。そのデータは次に、先ほど紹介した出力機を通じて、フイルムとして出てきます。

フィルム

 フィルムは教科書1ページに付き4枚出てきます。なぜ4枚出てくるかというと、カラー画像をきれいに仕上げるためです。専門用語で4色刷りと言います。

 フィルムはC(シアン=青)、M(マゼンタ=赤)、Y(イエロー=黄)、K(ブラック=黒)系統に分かれて出てきます。1枚1枚をよく見ると、わかりづらいかも知れませんが、それを重ね合わせると、鮮明できれいなものができ上がります。

 教科書の色がきれいなのは、4色刷りにその秘密があるのです。

印刷、製本

 印刷、製本は、外部の専門会社に依頼し、でき上がったものを学友書房が各地のウリハッキョに発送します。

[朝鮮新報 2003.4.7]