新義州特別行政区基本法

(全文)


 12日に採択された「朝鮮民主主義人民共和国新義州特別行政区基本法」の全文は次のとおり。

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 第1章 政治

 第1条 新義州特別行政区は朝鮮民主主義人民共和国の主権が行使される特殊行政単位である。

 国家は、新義州特別行政区を中央に直轄させる。

 第2条 国家は、新義州特別行政区に立法権、行政権、司法権を付与する。

 第3条 国家は、新義州特別行政区の法律制度を50年間変化させない。

 第4条 国家は、新義州特別行政区における住民と非住民の合法的権利と利益を保障するようにする。

 第5条 国家は、新義州特別行政区における住民と非住民の身辺を法に基づき保護するようにする。

 第6条 朝鮮民主主義人民共和国の内閣、委員会、省、中央機関は、新義州特別行政区事業に関与しない。
 新義州特別行政区に人員を派遣もしくは駐在させる場合は、長官の同意を得る。

 第7条 新義州特別行政区の防衛事業は国家が行う。
 国家は、必要に応じて新義州特別行政区に軍事要員を駐屯させることができる。
 新義州特別行政区は、駐屯部隊に社会秩序維持、災害救助の協力を要求できる。

 第8条 新義州特別行政区と関連した外交事業は国家が行う。
 新義州特別行政区は国家が委任した範囲で、自己の名義による対外事業を行い、新義州特別行政区の旅券を別に発給できる。

 第9条 国家は、新義州特別行政区で公式文献を朝鮮語で作成するようにする。
 外国語で作成された公式文献には朝鮮語の翻訳文を添付する。

 第10条 国家は、新義州特別行政区で他国の政治組織の活動を許容しないようにする。

 第11条 国家は、戦争、武装反乱のような事由の発生時、新義州特別行政区で非常事態を宣布できる。この場合、全国的に適用する法規を実施する。

 第2章 経済

 第12条 新義州特別行政区の土地と自然資源は朝鮮民主主義人民共和国の所有である。
 国家は、新義州特別行政区における土地と自然資源の侵害を許さない。

 第13条 国家は、新義州特別行政区を国際的な金融、貿易、商業、工業、先端科学、娯楽、観光地区で構成するようにする。

 第14条 国家は、新義州特別行政区に土地の開発、利用、管理の権限を付与する。
 新義州特別行政区の建設総計画は国家の承認を得る。
 対象建設は、承認された建設総計画に沿って行う。

 第15条 新義州特別行政区の土地賃貸期間は2052年12月31日までである。
 国家は、土地賃貸期間が終わった後も、企業の申請に従ってその期間を延長する。その場合、企業に与えた有利な経営活動条件をそのまま保障する。

 第16条 国家は、新義州特別行政区で合法的に得た土地利用権と建物、施設物を譲渡、賃貸、再賃貸、抵当するようにする。

 第17条 国家は、新義州特別行政区において個人所有の財産を保護し、それに対する相続権を保障するようにする。
 国家は、新義州特別行政区で個人所有の財産を国有化しない。
 国の安全と関連して、個人所有の財産を引き上げようとする場合はその価値を保障する。

 第18条 新義州特別行政区で住民の労働する年は16歳からである。
 国家は、労働する年に至っていない少年の労働を禁止する。

 第19条 国家は、新義州特別行政区における勤労者の労働時間を1日8時間、週48時間を超過しないようにする。

 第20条 国家は、新義州特別行政区に創設された企業が共和国の労力を採用するようにする。
 必要な職種には、区行政府の承認を得たうえで外国人を使用できる。

 第21条 国家は、新義州特別行政区における勤労者の最低労賃基準を、区行政府と共和国当該機関が合意し定めるようにする。

 第22条 国家は、新義州特別行政区で有給休暇制、社会保障制のような労働施策を正しく実施するようにする。

 第23条 国家は、新義州特別行政区では自己の貨幣金融施策を実施するようにする。
 新義州特別行政区では外貨を制限なしに搬出入できる。

 第24条 国家は、新義州特別行政区において公正で特恵的な税金制度を設ける。
 税金の種類と税率は新義州特別行政区が定める。

 第25条 国家は、新義州特別行政区で特恵関税制度を設ける。関税率は新義州特別行政区が定める。

 第26条 国家は、新義州特別行政区で会計制度を正し、計算と検証を厳しく行うようにする。

 第27条 国家は、新義州特別行政区自体が予算を編成し執行するようにする。
 予算と関連した立法会議決定は最高立法機関に登録する。

 第28条 国家は、新義州特別行政区で生産した商品の検査を自己が行い、原産地証明書を発給するようにする。

 第29条 国家は、新義州特別行政区における投資家の投資を奨励する。
 国の安全と住民の健康、環境保護を阻害したり経済技術的に立ち遅れた部門の投資はできない。

 第30条 新義州特別行政区における企業創設申請に対する審議は区行政府が行う。水産輸送業、航空輸送業は共和国当該機関の承認を受けてこそ行える。

 第31条 国家は、新義州特別行政区において企業に有利な投資環境と経済活動条件を保障するようにする。
 新義州特別行政区は人員の出入と物資、資金、情報、通信交流の便宜を保障する。

 第3章 文化

 第32条 朝鮮民主主義人民共和国は、新義州特別行政区で文化分野の施策を正しく実施し、住民の創造的能力を高め、健全な文化情緒的要求を充足させるようにする。

 第33条 国家は、新義州特別行政区で1年間の学校前義務教育を含む全般的11年制無料義務教育を区の予算で、高い水準で実施する。
 新義州特別行政区において社会科学科目教育は共和国の当該機関と合意しなければならない。

 第34条 国家は、新義州特別行政区において学齢前児童を託児所と幼稚園で育てるようにする。

 第35条 国家は、新義州特別行政区で先端科学技術を受け入れ、新たな科学技術分野を積極的に開拓するようにする。

 第36条 国家は、新義州特別行政区で現代的な文化施設を整え、広範な住民が文学芸術活動に参加するようにする。
 国の統一と民族の団結を阻害する文学芸術活動はできない。

 第37条 国家は、新義州特別行政区にある革命事跡地と名勝地、天然記念物、文化遺物を区の予算で特別に保護するようにする。
 保護する革命事跡地と名勝地、天然記念物、文化遺物は共和国の当該機関が定める。

 第38条 国家は、新義州特別行政区で医療保険制を実施するようにする。
 新義州特別行政区は伝染病のまん延のような重大な事態が発生した場合、共和国の当該機関に依頼してほう助を受けられる。

 第39条 国家は、新義州特別行政区において大衆スポーツ活動を奨励し、住民の体力を増進させ、スポーツ科学技術を発展させるようにする。

 第40条 国家は、新義州特別行政区で新聞、雑誌のような定期刊行物を発行し、逓信、放送網などを自己が運営するようにする。
 定期刊行物、逓信、放送網を利用して、住民の健全な社会意識と区の社会秩序を害する行為を行うことはできない。

 第41条 国家は、新義州特別行政区で自然資源を保存、造成し、環境汚染を防止し、住民たちに文化衛生的な生活環境と労働条件を整えるようにする。

 第4章 住民の基本権利と任務

 第42条 新義州特別行政区の住民になる条件は次のとおり。
 1、新義州特別行政区が組織される以前に居住した者
 2、共和国公民として、新義州特別行政区の要求に従って区内の機関、または企業に就職した者
 3、外国人で合法的な職業を持ち、区に7年以上居住した者
 4、最高立法機関または長官が推薦した者

 第43条 住民は社会生活の全ての分野において、誰もが同等の権利と義務を担う。
 性別、国籍別、民族別、人種別、言語、財産と知識程度、政見、信仰によって住民は差別を受けない。

 第44条 新義州特別行政区において17歳以上の住民は選挙権と被選挙権を有する。
 法に基づき選挙権を奪われた者は、選挙権と被選挙権を有することはできない。

 第45条 住民は言論、出版、集会、デモ、スト、結社の自由を有する。この権利は新義州特別行政区の当該法規によって保障される。

 第46条 住民は信仰の自由を有する。
 いかなる者も社会秩序を害するのに宗教を利用できない。

 第47条 住民は人身と住宅の不可侵権、書信の秘密を保障される。
 法に根拠せずには住民を拘束、逮捕したり、身柄や住宅を捜索できない。

 第48条 住民は申訴と請願の権利を有する。
 新義州特別行政区は住民の申訴と請願を公正に審議、処理する。

 第49条 住民は居住の移転、旅行の自由を有する。
 共和国の他の地域、または外国に移住したり旅行する秩序は、新義州特別行政区が定める。

 第50条 住民は労働に対する権利を有する。
 住民は、希望と才能に沿って職業を選択でき、労働にともなう報酬を受ける。

 第51条 住民は休息する権利を有する。
 新義州特別行政区において住民は共和国の定めた公休日、祝日の休息の保障を受け、外国人は民族の風習に基づく休息の保障を受けられる。

 第52条 住民は治療を受ける権利を有する。
 年をとっていたり、病気または障害で労働能力を喪失した人、世話をする人がいない年寄りや子どもは、社会保険と社会保障制度による物質的ほう助を受ける。

 第53条 住民は教育を受ける権利を有する。この権利は、新義州特別行政区の教育施策によって保障される。

 第54条 住民は、科学と文学芸術活動の自由を有する。
 新義州特別行政区は、法に基づき著作権と発明権、特許権を特別に保護する。

 第55条 女子は男子と同等の社会的地位と権利を有する。
 新義州特別行政区は、産前産後の休暇制のような施策で、乳飲み子を持つ母親と子どもを保護する。

 第56条 住民は結婚の自由を有する。
 新義州特別行政区は法に基づき結婚と家庭を保護する。

 第57条 新義州特別行政区において住民権をえた外国人は、住民と同等の権利と義務を担う。しかし、住民権をもたない外国人は選挙権と被選挙権、区の予算で実施する社会的恩恵を受ける権利を有することはできない。

 第58条 新義州特別行政区の共和国公民は祖国防衛の義務を担う。
 新義州特別行政区における軍隊召募秩序は他に定める。

 第59条 法規は住民の意思と利益を反映するもので、区管理の基本手段である。
 住民は新義州特別行政区で制定された法規を尊重し厳格に順守しなければならない。

 第5章 機構

 第1節 立法会議

 第60条 立法会議は新義州特別行政区の立法機関である。
 立法権は立法会議が行使する。

 第61条 立法会議議員数は15人とする。
 立法会議議員は住民の一般的、平等的、直接的選挙原則に沿って秘密投票で選挙する。

 第62条 立法会議議員には新義州特別行政区の共和国公民がなれる。
 新義州特別行政区の住民権を持つ外国人も立法会議議員になれる。

 第63条 毎期の立法会議任期は5年である。
 立法会議議員の任期は立法会議任期と同じである。

 第64条 立法会議の権限は次のとおりである。
 1、法規を制定したり修正、補充、廃止する。
 2、区の予算とその執行に対する報告を審議、承認する。
 3、採択した法規を解釈する。
 4、長官から行政府の事業報告を聴取し審議する。
 5、長官の提議に沿って区の裁判所所長を任命、解任する。
 6、区の裁判所所長の提議に沿って区の裁判所判事、地区裁判所所長、判事を任命、解任する。

 第65条 立法会議は定期会議と非定期会議を開く。
 定期会議は半期に1回、非定期会議は定期会議の休会期間に立法会議議員全員の3分の1以上の要請に基づき招集する。
 会議期間は年に100日以上とする。

 第66条 立法会議は、議員全員の3分の2以上が参席して成立する。

 第67条 立法会議には、議長、副議長を置く。議長、副議長の任期は立法会議の任期と同じである。

 第68条 立法会議議長、副議長は、立法会議で選挙する。議長、副議長は、会議に参席した立法会議議員の半数以上の賛成を得て選挙される。

 第69条 立法会議議長の任務は次のとおり。
 1、立法会議を司会する。
 2、立法会議の招集日を定め公布する。
 3、立法会議が委任した事業を行う。

 第70条 立法会議の副議長は、議長の活動を助ける。議長が欠院中あるいは職務を遂行できない場合には、それを代理する。

 第71条 立法会議の議案は、議員らが提出する。長官と行政府も立法会議の議案を提出できる。

 第72条 立法会議は、決定を下す。立法会議の決定は、会議に参席した議員の半数以上の賛成を得て採択する。

 第73条 立法会議は、採択した決定について長官に意見を提起する場合、1カ月以内に再び審議する。再審議して採択された決定について長官に意見を提起する場合、立法会議の議員全員の3分の2以上の賛成を得て採択する。この場合、長官は義務的に同意する。

 第74条 立法会議で採択した決定は、1カ月以内に最高立法機関に登録する。最高立法機関は、提出された決定について登録あるいは送り返して修正させることができる。登録せず送り返した決定は、効力を持たない。

 第75条 立法会議の議員は、不可侵権の保証を得る。立法会議の議員は、現行犯の場合を除いて立法会議の承認なしに拘束あるいは逮捕することができない。

 第2節 長官

 第76条 長官は、新義州特別行政区を代表する。長官は、自己の事業について最高立法会議の前に責任を負う。

 第77条 長官には、新義州特別行政区の住民として事業能力があり、住民の信望の厚い者が就任する。長官の任命と解任は最高立法機関が行う。

 第78条 長官は、朝鮮民主主義人民共和国と新義州特別行政区に忠実であることを宣誓する。宣誓は最高人民会議常任委員会の全体会議で行う。

 第79条 長官の権限と任務は次のとおり。
 1、区事業を指導する。
 2、立法会議の決定、行政府の指示を公布し命令を下す。
 3、行政府メンバーを任命、解任する。
 4、区検察所所長を任命、解任する。
 5、区検察所所長の提議により区検察所副所長、検事、地区検察所所長を任命、解任する。
 6、区警察局局長を任命、解任する。
 7、区警察局局長の提議により区警察局副局長、部署責任者、地区警察署署長を任命、解任する。
 8、賞状を制定、授与する。
 9、大使権と特使権を行使できる。
 10、これ以外で提起される事業を行う。

 第80条 長官は、立法会議で採択された決定が区の利益に合致しないと認められた場合、それを立法会議に送り返し、再び審議させることができる。立法会議が下した1件の決定について長官は、2回まで送り返すことができる。

 第3節 行政府

 第81条 行政府は、新義州特別行政府区の行政的執行機関であり、全般的な管理機関である。行政府の責任者は長官である。

 第82条 行政府には、必要な部署を置く。行政府の部署責任者、警察局局長には、新義州特別行政区の住民がなる。

 第83条 行政府の任務と権限は次のとおり
 1、法規執行事業を組織する。
 2、区の予算を編成してその執行対策を講じる。
 3、教育、科学、文化、保健、体育、環境保護のような各部門の事業を組織し執行する。
 4、住民行政事業を行う。
 5、社会秩序を維持する事業を行う。
 6、建設総計画を作成する。
 7、建設許可および竣工検査を行う。
 8、投資誘致を行う。
 9、企業の創設申請を審議、承認する。
 10、土地利用権、建物を登録する。
 11、税務事業を行う。
 12、税関検査、衛生、動植物の検疫事業を行う。
 13、インフラ施設を管理する。
 14、消防対策を講じる。
 15、国家の委任に基づく対外事務を処理する。

 第84条 行政府は、指示を下す。

 第4節 検察所

 第85条 新義州特別行政区の検察事業は、区検察所と地区検察所が行う。

 第86条 検察所の任務は次のとおり。
 1、法規を正確に順守するかを監視する。
 2、法の定めに基づき犯罪事件について捜査、起訴を行い、法人と個人の合法的権利と生命財産を保護する。

 第87条 区検察所所長には、新義州特別行政区の住民がなる。所長の任期は5年である。

 第88条 地区検察所検事の任命、解任は、地区検察所所長の提議により新義州特別行政区検察所所長が行う。

 第89条 新義州特別行政区において検察事業に対する指導は、区検察所が行う。地区検察所は区検察所に服従する。

 第90条 新義州特別行政区検察所は、自己の事業について長官の前に責任を負う。

 第5節 裁判所

 第91条 新義州特別行政区における裁判は、区裁判所と地区裁判所が行う。判決は朝鮮民主主義人民共和国新義州特別行政区の当該裁判所の名義で宣告する。

 第92条 裁判所の任務は次のとおり。
 1、提起された事件について裁判する。
 2、法人と個人の合法的権利と生命財産を保護する。
 3、裁判活動を通じて法規を正確に順守するよう教育する。
 4、判決、判定を執行する。

 第93条 裁判は、唯一、法に基づいて独自的に行う。誰も裁判活動に干渉することができない。

 第94条 区裁判所所長には、新義州特別行政区の住民がなる。所長の任期は立法会議の任期と同じである。

 第95条 裁判は、判事1人と審議官2人で構成し、裁判を行う。場合によって判事3人で裁判所を構成し裁判することもできる。

 第96条 裁判は公開し、被告人の弁護権を保証する。特殊な事件に対する裁判は公開しないこともある。

 第97条 裁判は、朝鮮語で行う。他国の人は、裁判において自国の言葉を使うことができる。

 第98条 新義州特別行政区において裁判事業に対する監督は、区裁判所が行う。区裁判所は、最終裁判機関である。区章、区旗の使用秩序は新義州特別行政区が定める。

 第6章 区章、区旗

 第99条 新義州特別行政区は、朝鮮民主主義人民共和国国章、国旗を使用するほか、自己の区章、区旗を使用する。

 第100条 新義州特別行政区の区章は、円形空色の線と白色の帯内の左右の下部分に空色の5角形星が描かれ、その上の部分には空色で「朝鮮民主主義人民共和国」と書かれており、白色の帯に囲まれた空色をパターンにした中心には木蘭の花が白色で描かれており、その下の円形の下の部分と重なった空色の帯の部分には2列で「新義州特別行政区」と白色で書かれている。円形空色のパターンの下部分と空色の帯が重なった部分には白い線がある。

 第101条 新義州特別行政区の区旗は、空色パターンの中心に木蘭の花が白色で描かれている。旗の縦と横の比率は1:1・5である。

 附則

 第1条 この法は、採択された日から実施する。

 第2条 新義州特別行政区には、朝鮮民主主義人民共和国の国籍、国章、国旗、国歌、首都、領海、領空、国家安全に関する法規以外の法規を適用しない。

 第3条 新義州特別行政区における法規制定は、この法に厳格に準じなければならない。

 第4条 この法の解釈は、最高人民会議常任委員会が行う。

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