劇団アラン・サムセ東京公演「アリラン-我離郎、我里娘」

混在の中から「ひとつ」めざす視点


 劇団アラン・サムセの2002年度公演が13〜16日、東京・新宿区のタイニイアリスで行われた。

 作品名「アリラン」(作/演出=朴成徳)のサブタイトルは、「我離郎、我里娘」。自我を離れる男と我が里の娘、本作品は、在日コリアンの若者・南一と本国から日本に渡ってきた女性・ユジョンとの恋愛を軸に展開される。日本語しか話せない「在日」と、日本語を聞き取れない「本国人」。言葉の通じないふたりのやりとりがおかしい。

 「ユジョンの言葉の3分の1でも聞き取れたらいいのに…」。南一は、電子翻訳機を使って、彼女と意思の疎通を図ろうとする。ユジョンが口ずさむ「アリラン」の歌声は、南一に亡きハルモニを想わせる。母国語を学び、彼女にアプローチする南一。一方、親が決めた南一の婚約者という女性は、日本国籍を取得した「帰化」者という設定。登場人物たちはそれぞれの心の葛藤を表していくが、南一の婚約者は「私も反対側からアリラン峠を越えた」と話す。

 彼らのいう「アリラン峠」とはいったい何を指しているのか。本国と日本、朝鮮籍と日本籍、母国語を話せるか否か…。日本に住むコリアンの中にさまざまな形で混在する者同士が互いの違いを越えてひとつになろうという呼びかけなのか。

 作品はいかようにも解釈できる。が、作者の意図するものを読み取るのは難しかった。役者の熱意は伝わってくるが、ソウルから来たというユジョンの発音など気になる。

 作者、役者は全員朝鮮学校出身者。朝鮮大学を卒業したものも半数以上を占めるという。脚本の創作、朝鮮語の表現…、課題は多いが、まずは果敢な挑戦に拍手。(潤)

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