取材ノート

エセ歴史研究者の植民地論


 日本の朝鮮植民地支配「肯定論」を展開し、南で「有害図書」に指定された金完燮の本が売れている。発行元はフジ・サンケイグループの扶桑社、日本語訳をしたのは「現代コリア」の荒木和博ら。いわずと知れた反朝鮮・反総聯、いや反コリア急先鋒の一群だ。

 7月の終わりから8月初にかけ、南の歴史学者たちとの懇談のためにソウルを訪れたある日本人研究者は、参加者の1人から次のような質問を受けたという。

 「歴史研究者でもない人間の書いた物を、あたかも歴史研究の成果であるかのように宣伝されるのは心外だ。歴史を恣意的に書かれては困る。相互理解を阻む、取り返しのつかない障害になる」

 つとめて冷静に、言葉を選んでの発言だったが、内心は「怒り心頭」のようだったという。

 金完燮の説に力を得てか、かつての日本と朝鮮半島は欧米列強のアジア侵略とは質が違い、「合併国家」のようなものだったとの主張を真顔で唱える連中も出てくる始末だ。

 民族の言葉、名前を奪い、そして土地、食べ物、文化財までを奪った。

 推定で600万人を越える同胞たちを強制連行・徴用、「従軍慰安婦」を強要した。軍人・軍属としても駆りたてた。これがなんの「合併国家」か。

 参政権を与え、軍の要職に付いていた者がいる、と正当化を計るが、その彼らを朝鮮民族は「売国奴」と規定している。

 こうした暴論、歴史のわい曲に、「韓国社会はようやく成熟した」と「自虐グループ」はしたり顔だが、コリアンは誰もそんな説を認めない。

 「自虐グループ」に理解を示す評論家たちにすら、「日本の国粋主義的な人たちに過度に擦り寄った」り、「日本が悪いことをしたという反省を、まず前提として常に示すべきだ」(八幡和郎氏)と、見抜かれてしまっている。 (彦)

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