南で初の公演 在日朝鮮学生少年芸術団

統一へ力強いメッセージ

血と汗で守った朝鮮学校 半世紀の時空越え伝える


 分断半世紀を越え、初めて実現した南での在日朝鮮学生少年芸術団の公演。ウリマルで話し、ウリチャンダン(朝鮮のリズム)に合わせて統一、民族、祖国への思いを伝える朝鮮学校生徒の姿は、血と汗で朝鮮学校を造り上げた在日同胞の生き様を浮かび上がらせ、南の同胞にも伝えることになった。(文・本紙張慧純記者、写真・学友書房権理華記者)

差別に打ち勝った姿

芸術団の公演に会場は感動と涙が(4日、ソウル)

 稲妻が鳴り、チマ・チョゴリを切り裂かれた女生徒が足早に舞台に登場する劇的なオープニング。

 群舞「竜巻」。朝鮮バッシングが起きるたびに繰り返されてきた朝鮮学校生徒に対する暴言、暴力。主人公は怒りとくやしさのあまり、拳を震わせながら地を叩く。

 生徒が披露した演目中、南の市民たちが一番印象に残ったと話していた場面だ。日本社会における差別に打ち勝ち、民族の尊厳を守ってきた在日同胞の生き様を象徴するかのように、主人公が晴れやかな表情で新しいチョゴリを身に付けるクライマックスでは、ソウル、全州の両公演で大きな拍手が沸き起こった。

空港で最初に芸術団を迎えたのはソウル国際芸術高等学校の生徒たちだった(2日、仁川空港)

 完州鳳東初等学校教員の鄭銀淑さん(43)は、「在日同胞が日本でこんなにひどい差別を受けているのかと思うと、涙が止まらず、胸がつまりそうでした」と声を震わせた。

 「困難な環境のなかで民族教育を守っている在日同胞を助ける方法がないだろうか。統一を実現するため、手を結ぶ方法がないのかを考えてみます」と語る鄭さん。ソウル、全州の両公演に足を運んだ韓相烈牧師は、「朝鮮学校生徒の姿に民族、分断の痛みを痛感した」という。

 芸術団メンバーの祖父母、曽祖父母たちは、「統一した日に故郷に帰ろう」、と自身の生活より同胞の子どもたちに民族の言葉、歴史を教えることを優先させた。夢にまで見た故郷の地を踏むことなく、この世を去った人は数知れない。

1世の願い胸に

 1世の切なる願いと希望を託された子どもたち。

 だからこそ、彼、彼女らが発する「統一」の言葉は力強かった。異国で育った3、4世が民族の言葉、歌と踊り、楽器を奏でる姿、存在そのものが強いメッセージを放っていた。

 2歳の娘、夫人とともに全州公演を観覧した金相敏さん(31)は、「女性独唱の『朝鮮人の誇りを持って生きる』という歌詞が心に強く響きました」。娘を見つめながら、「この子が大人になるまで分断を克服し、ひとつの祖国を譲りたい」と語った。

 ソウル公演に訪れた蔡香順・ソウル大教授(韓国舞踊、打楽器)は、「言葉がとても上手で感情表現も豊か。感動が2倍3倍にも伝わってきた」と語る。生徒が披露した舞踊作品は、同胞2世の玄佳宏・東京朝高講師、池順姫・神戸朝高教員が創作したものだが、「短い時間にはっきりとしたメッセージが伝わってきた」と高い評価を受けた。

 ソウル公演の開演1時間前。ロビーには民族楽器重奏に出演するユ・スボンさんの親せきが、今か今かと開演を待ちわびていた。スボンさんの祖母の妹やその孫などソウルだけでも親せきが150人いると言う。

 南の親せきが日本でスボンさんと会ったのは10年前。「故郷に来るという知らせがもう少し早かったら、もっとたくさん連れてこられたのに」と語る叔母の李恵貞さん(36)は、「あまりにも誇らしい姿だった。統一すればもっとたくさん会える。統一がその道を開く」と涙を流していた。

仲良く交流

ソウルの生徒ともすっかりうちとけた

 ソウル公演後、舞台の袖で泣きじゃくる女生徒がいた。ソウル国楽芸術高等学校の朴チョンミさん(15)。「なぜ別れなければならないの…寂しくてしょうがない。毎日でも会えればいいのに」。そばにいた叔母がいくら慰めても涙が止めどもなく頬を伝う。

 全州公演後、出演者でごった返した舞台は涙、涙だった。公演に賛助出演した全州芸術高等学校と朝鮮学校の子どもたちが抱き合い、泣きじゃくる。全州芸高の金ヒヨンさん(17)は、「感動的な出会いでした。1日も早く祖国が裂かれた痛みがなくなればいいのに」。

「また会おう!」笑顔でお別れ(6日、全州)

 今回、在日同胞の民族教育、とくにその芸術教育のレベルの高さに興味を示してきたソウル国楽芸術高等学校と全州芸術高等学校が公演を主管、賛助出演したことで、南と朝鮮学校生徒の交流が初めて実現した。

 両校の生徒たちは何年も前から机を並べてきた学友のように、仲良く過ごした。

 「楽器はいつ始めたの?」「学校ではどんな練習をするの?」。民族文化を愛する者同士だけに通い合うものがある。分断の歴史ゆえに学んだ内容に多少の違いはあれど、その違いにも興味が沸き、話は尽きない。なんといっても言葉が通じる。

 全州芸高の黄正秀芸術課長(41)は、「子どもたちが交流すれば『ウリ(われわれ)のもの』を探すことができる。私たちの世代は反共教育を受け、総聯の学校について少なからぬ偏見を持っていたが、子どもたちが交流する姿に民族の対立はない。統一を近づけるため、文化、芸術が先を行かなければ」と話していた。

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