取材ノート

一人一人と話す大切さ


 「朝鮮の子どもたちに暖かい冬を」と、太陽光発電機、水力発電機の支援を続けている日本のNGO「ラブ・アンド・ピース」(代表=藤澤房俊・東京経済大学教授)。そのメンバーとして2度の訪朝経験を持つのが、東京経済大学現代法学部2年生で19歳の中條朝(はじめ)君だ。

 彼が昨年の1回目の訪問後に書いた紀行文を見せてもらったが、若者らしく率直に、見たこと、体験したことを書いていたのが印象的だった。

 そんな彼が1つ驚いたことがあるという。酒の席で朝鮮の人たちが、「平壌市外や飢餓で苦しんでいる人たちをなぜ隠そうとするのか」などといった きつい 質問にも正直に答えてくれたというのだ。1度や2度しか訪朝していない人にマイナス部分を見せても、自国に帰ってどのように語り、報道するかは目に見えている、というのが彼らの答えだった。

 「北朝鮮の人たちは自分に都合のいいものしか見せず、都合の悪いものは認めないと思っていた」中條君だが、このやりとりを通じて、「歴史や現状をしっかり認識したうえで、きちんとした態度で尋ねれば、率直に受け止め、きちんと答えてくれる」との結論に達した。

 「一人一人と話すことで、流されているマイナスイメージとは違うものを感じた。向こうの若い人たちは議論好きだから」と、直接現地に行ってできるだけたくさんの人たちと話すことの大切さを強調した。

 17日、日本の首相として初めて、小泉首相が朝鮮を訪れ、金正日総書記と会談する。「近くて遠い国」だった両国が、「近くて近い関係」になるきっかけとなることが期待される。そうすれば、市民同士の交流も増えるだろうし、交流が増えれば互いの誤解も解けていくだろう。

 とくに、中條君のような若い世代同士の交流がより活発になればと思う。(聖)

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