「ムジゲ交流会フェスタin北海道」

触れ合いが理解生む


 「歩こう歩こう、私は元気ー」。同胞障害者たちがマイクを持って元気に歌い、チャンゴやプクを叩く。8月23日、北海道朝鮮初中高級学校体育館は終始、歓声と笑顔に包まれた。同胞障害者家族のためのネットワークであるムジゲ会は2年に1回各地で交流会を開いている。今回は「ムジゲ交流会フェスタin北海道」と題して、23〜25日にかけ北海道で行われた。生徒たちの文化公演や運動会、そして焼肉など、心尽くしの準備でムジゲ会を迎えた地元北海道の同胞たち。ボランティア募集は定員オーバーも出るほどで、同胞福祉への関心を高めるきっかけとなった。

手探りで進めた準備作業

ムジゲ会の一行を、拍手と笑顔で迎える北海道の同胞たち

 23日午後、同胞たちの拍手と笑顔に迎えられ、北海道朝鮮初中高級学校にムジゲ会メンバーの乗った2台のバスが到着した。車椅子の同胞障害者のために、会場の入り口にはスロープが取り付けられている。男性教員たちの手作りだ。

 「同胞社会で福祉問題に対する関心が高まっている中、交流会を成功させるためにどうすればいいのか。初めての経験ということもあり、2カ月前から準備を始め事務局では何度も討議を重ねました」と、総聯北海道本部の丁聖漢総務部長。

 とくに、ボランティアを募集するために女性同盟、総聯支部、分会、朝青をはじめ幅広い同胞に参加を呼びかけた。ボランティアの役割や障害児についての資料を作成し勉強会も開いた。

チャンゴやプクを叩き楽しく過ごした交流会

 文化公演や運動会などは学校が企画。同校吹奏楽部の合奏と舞踊部の踊りが披露された。

 「朝鮮学校に通っていない障害者のために、公演を通じて民族に触れてもらえるよう民族色あふれる演目を選んだ」、同校体育教師の具恵先生(37)は言う。

 夕食に振る舞われた焼肉、そしてビンゴゲームは、青商会と福祉事業協力会が準備した。また、学齢前の子どもをもつ母親の会「ミレ会」が会場の飾り付けを行い、手作りの写真入れをムジゲ会の家族にプレゼントするなど、北海道の同胞が一丸となって取り組んだ。

 スイトウ症の障害を持つ剛来くん(11)の父親、北海道在住の趙順済さん(42)も、自ら資金集めなどに奔走した。「在日同胞にも障害をもった子どもがいるんだということを北海道の子どもたちにぜひ知ってほしかった。大きな刺激になったと思います」。

6年前から福祉活動

 北海道には同胞障害者のためのネットワークはなく、北海道朝鮮初中高級学校にも現在障害児は在籍していない。そんな中、同校の具先生は、6年前から体育の授業を利用して1年に1回、生徒たちを交えての福祉活動を行ってきた。

 「初級部の体育の授業でプールに行ったときでした。障害者のグループを見て、生徒たちが『なんであの人たちは言葉が喋れないの?』『なんであんな顔をしているの?』と聞いてきたんです。生徒たちが障害に関して知る機会をまったく持っていない、これはいけないと感じたのがきっかけでした」

 障害者の施設訪問や日本学校の障害者学級との交流会を通じ、障害者と触れ合う機会を設け車椅子の使い方も勉強した。

 今回のボランティア参加者は、3分の1がこの福祉活動を体験した生徒や卒業生たちだった。李勇秀さん(高3)もボランティアを募集していることを具先生から聞き、参加を希望した。「担当した竜禎くんは肢体不自由のため車椅子。でも階段の上り下りや坂道の下り方などは、体育の授業で扱い方を習っていたおかげで対応できました」。

 同校卒業後、福祉の専門学校へ進んだ蔡潤姫さん(20)は、「初めて同胞障害者と触れ合ってみて学んだこと、感じたことがたくさんありました。障害児の父母たちが『理解を広げてほしい』と話すのを聞いて、もっとこのような交流会が開かれればいいと思った」と感想を述べた。

 初めての交流会で、同胞福祉への関心は着実に高まったようだ。

 ボランティアで参加した李玲秀さん(44)はこう感想を述べた。「『やってあげる』という立場ではなく、ボランティアと障害者はお互いに信頼し合う関係にならなければ、と思った。3日間は『終わった』が、今がスタートラインです」。(金雪滋記者)

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