閑話休題

「関東大震災」の教訓

朝鮮報道に見る誤報の怖さ


 79回目の9月1日がやってくる。

 途方もない誤報やデマが社会を混乱させ、人々を狂気に走らせた「関東大震災の朝鮮人虐殺事件」は、いまだに在日朝鮮人の記憶の中に生き続けている。誤報はなぜ繰り返されるのか。「誤報―新聞報道の死角―」(岩波新書)の著者・元朝日新聞記者の後藤文康さんは、マスコミが発達すればするほど、世論を誤らせる危険性はむしろ高まっている、と警鐘を鳴らす。

 著書の中で、新聞が冒してきた数々の誤報がどのように生まれたのかを具体的に分析しているが、改めて「誤報」の及ぼす恐ろしさを浮き彫りにする。

 後藤さんはこう述べている。「情報を扱うものの大原則は、情報の正確さの吟味をおろそかにしてはいけないということだ。とりわけ、ある先入観とか、ある判断、ある意図をもった情報の扱い、このことを厳にいましめなければならない。私たちの行動、考え方、生活様式の9割をマスコミが支配しているといってもいいだろう」。

 それほどの影響力を持つマスコミが、こと朝鮮報道に関しては未確認の公安情報や南朝鮮情報を流し、世論を誤った方向へと導いている、と後藤さんは深く危惧する。

 情報の出所を検証もせず、朝鮮叩きに利用する日本のメディアの無法ぶり。その先には一体何があるのだろうか。20世紀の戦争と殺りくの責任の一端は、侵略戦争を鼓舞し続けた日本のメディアにあるのは間違いない。79年前の事件から歴史の教訓を汲み取るべきであろう。(粉)

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