「きれいな心で踊り続けたい」

プロダンサー目指し9月に渡英する崔由姫さんに聞く


「在日・朝鮮民主主義人民共和国」として出場した第30回ローザンヌ国際コンクールでは、表現力豊かな踊りで世界を魅了した
 世界の1流バレエ団で1年間研修ができるローザンヌ国際コンクール「プロ研修賞」。普段の練習からリハーサルまでトップダンサーたちとまったく同じスケジュールをこなすハードなものだ。運が良ければ本番の舞台に上がれる可能性もあるという。同賞を受け9月から単身、英ロイヤルバレエ団で研修生活に臨む崔由姫さん(17)。「4、5年後には、外国の1流バレエ団で活躍するトップスターの座に駆け上るだろう。あせらず、いろんなものを吸収しながら、バレエの世界で花開いてほしい」(日仏芸術舞踊センターの工藤大貳代表)。彼女の活躍に世界中の同胞が期待を寄せる。

 ―英ロイヤルバレエ団を選択した理由は。

 演劇調の作品が多いのが特徴で、演技力を身につけられると思ったから。大きなカンパニーだし、プリンシパルが世界的に有名だ。97年にローザンヌで最優秀となった19歳のアリーナ・コジョカルやシルビ・ギエムなどに注目している。

 ―外国に行って、民族性への考えがどのように変わったか。またそれはバレエにどのように影響したか。

北九州初中時代の級友とともに。「彼らは応援してくれる心強い見方、ホッとできる仲間」

 民族教育を受け、朝鮮人として生きてきたことを「当たり前」のこととして受け止めていたが、外国に出て初めてそれが「誇り」に、ありがたく感じられた。いくら努力しても西洋人のようにはなれないし、またテクニックだけで人を感動させることはできない。コンクールで順位を上げるにはテクニック以上にプラスアルファの魅力、個性が必要。日本で生まれ、朝鮮学校で学んだ在日コリアンの「チェ・ユヒ」という個性を生かせたことが、今回の成績につながったと思う。

 視野も広がった。例えばあまり好きではなかった朝鮮舞踊が、実は上半身をとてもきれいに見せる踊りだと気付いたこととか…。これからも朝鮮、日本、フランス、イギリス、世界中の文化を吸収し、人間として、ダンサーとしての幅を広げていきたい。

 ―将来の夢は。

 素敵なダンサーの前に、素敵な大人になること。踊りにはその人の性格が出るといわれる。いつまでもきれいな心できれいな踊りを踊り続けたい。そしてスターになっても両親や恩師、応援してくれる同胞たちへの感謝の気持ちを忘れずにいたい。いつかは指導する立場に立ち、ダンサーを志す人を助けていきたい。

 ―バレエや朝鮮舞踊を学ぶ全国の後輩たちに一言。

 やろうと思ったことはすぐにやること。チャンスは自分で探すこと。最後まであきらめなければ、努力は必ず実るはず。日本と同じように外国でもまだまだ差別はあるが、悔しさをバネにして結果を出せば、みんなが認めてくれることを私自身、学んだ。がんばってこそ自分に自信が持てるし、その自信が差別や偏見を乗り越えていく力になると思う。素敵なダンサーに、素敵な人間になってください。(李明花記者)

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