取材ノート
声なき声拾う場に
在日本朝鮮人人権協会主催の、同胞女性による勉強会に時々顔を出している。
参加者は女性同盟の活動家、税理士、主婦、日本の大学院でジェンダーや朝鮮近代史を研究する学生など、育った環境や年齢も色々だ。仕事柄、人と出会うことは多いが、自分と違う背景を持った女性と1つのテーマについて話し合う機会はそうない。 7月の勉強会では、翻訳家の朴和美さんが在日同胞社会における「家族」について話してくれた。朴さんは、最近同胞のなかで離婚が増えていることを挙げ、日本社会の制度的保護の枠から外されている同胞女性が離婚という形で家族という共同体から離れることで2重、3重の困難を抱えている問題を指摘した。 勉強会には東京・上野にある同胞法律・生活センターの相談員も参加していたが、事実離婚に悩む女性の相談が増えているという。パートナーの暴力によって精神的なダメージを受けるケースも多々あるようだ。専門的なカウンセラーが必要だとの指摘もあった。 さまざまな理由で結婚を断念せざるをえないカップルもいる。問題はその後だ。 勉強会の場では一人子どもを抱え、実家にも戻れず経済的な基盤もない、行き場を失った女性たちを救う「受け皿作り」も提案された。同胞社会にネットワークを持った民族団体がその役割を担えるのでは、との声も聞かれた。さまざまな議論を聞きながら、離婚を機に子どもの民族教育を断念せざるをえないと話したある女性の嘆きを思い出していた。 同胞女性をめぐる問題は一筋縄では解決ならないものばかり。大事なことは、自らが立つ位置を広い視野をもって確認し、明日への糧になる理論や実践を学ぶことではなかろうか。 「今」を生きる女性たちのこの集まりを、行き場のない無数の「声」を拾い、新たな活力を与える場にしたいと強く思った。(純) |