春・夏・秋・冬

 近所の図書館に立ち寄ったところ、「原爆写真展」が開催されていた。あまりのつらさに「いっそ殺してください」と語る大やけどを負った少年、水を探し求めてさまよう人々、写真ではとても見せられなかったのか、肉が焼けドロドロになったまま放心状態で歩く人々の姿を描いた絵も展示されていた。思わず目を背けたくなったが、直視しなければいけないと思った。これが戦争の実態なのだ

▼戦後57年が過ぎ、戦争を知らない人たちが増えた。それにともない、日本の国会の中でも、「勇ましい」議論が聞こえてくる。昨年の「9.11」以降はなおさらだ。しかし、実際に戦争を体験した人々は、そのような危うい状況に警鐘を鳴らす。「戦争は悲惨なのだ」と

▼前参議院議員の田英夫氏は、特攻隊として訓練をしていた最中に終戦を迎えた。現在は講演活動を通して、その体験を語り、戦争の愚かさを説く毎日だ。田氏は東京新聞14日付の記事で、戦争を知らない若手議員らが平気で軍隊所持論や改憲論を唱えるのを聞いて、これはいけないと思ったと自身の体験を語る動機について話している

▼第2次世界大戦終結以降も世界のどこかで戦争は起きている。ハイテク兵器が使われる近年の戦争では、とくにその悲惨さが見えにくい

▼「日本人は広島、長崎の体験をして、核兵器の恐ろしさを体験している唯一の国民だ。このことを非常に大事に考えるべきだ。今度戦争が起これば、必ず核が使われる。そうなれば人類滅亡の危険さえある」(東京新聞14日付)。田氏の警告に耳を傾けるべきだ。(聖)

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