「子どもたちに暖かい冬を」
朝鮮にエネルギー支援続ける日本のNGO
地域によってはマイナス20℃以下にまで冷え込む朝鮮の冬。エネルギー不足が続く中、子どもたちに少しでも暖をとってもらおうと、「KOREAこどもキャンペーン」では託児所に太陽光発電機を支援する事業を推進している。現在は10月の第2弾支援に向けて募金を集めている。また、「NGOラブ・アンド・ピース」では、黄海北道の水力発電所に発電機を3台支援。協同農場の照明、暖房、水汲み、養魚場の稼動などに役立っている。
託児所の灯は「心のエネルギー」 太陽光発電-KOREAこどもキャンペーン-
「一人ひとりの顔が見える支援をできないだろうか」 そんな思いで支援を続けてきたと語るのは、「KOREAこどもキャンペーン」事務局長の筒井由紀子さんだ。 96年、「North Korea水害支援」を設立し、コメ、食用油、栄養食、小麦などを支援してきた。だが、98年の人工衛星打ち上げ以降、朝鮮への支援が集まりにくくなった。支援活動はますます困難を極めた。 現地で見たこと、出会った人々のことを何とか伝えられないだろうか。そんな思いから、幼稚園や人民学校(小学校)を訪れて子どもに絵を描いてもらい、それを持ち帰り絵画展を開催したり、日本の小学生が集めた未使用の文房具セットを、「しあわせ宅配便」として人民学校に通う子どもたちに贈る活動を行っている。 太陽光発電機支援もその一環だ。エネルギー不足で十分に暖をとることのできない子どもたちのためにと、昨年7月、平壌から東50キロにあるテガン協同農場の託児所に設置した。 「太陽の力は、暖房という実際の暖かさだけでなく、停電の時でも託児所に明かりが灯っていることで、心の支えになっているようだ。エネルギーは『心のエネルギー』にもなり得るのです」(筒井さん)。 第2弾のキャンペーンでは、昨年設置した装置がより効率的に発電できるよう、パネル増設などを行う方向だ。10月の設置を目指して、募金などの協力を呼びかけている。 「どんな事があっても、毎月必ず募金を送ってくれる人がいる。その人たちの思いを伝えたい。そこから信頼と友好が生まれる」と筒井さんは話す。 人間同士の関係築くため 水力発電機-NGOラブ・アンド・ピース-
「NGOラブ・アンド・ピース」は黄海北道瑞興郡の泛雁第8号発電所に、100キロワット/16極1台、50キロワット/16極2台、計3台の発電機を支援した。 太陽光発電機支援にも関わっており、そのために昨年7月に訪朝した際、瑞興郡も訪れた。「協同農場を直接訪れ、電力がどう調達されているかこの目で見たかった」と代表の藤澤房俊・東京経済大学教授はいう。 小規模の発電所にはダムはあったが、モーターは動いていない。聞くと、日本の植民地時代に作られたもので、コイルが焼けてしまって使えないという。早急に検討し、先の3台の発電機を送った。
今年6月に訪朝した際、泛雁発電所から送られる電力のおかげでオンドル(床暖房)が機能し、炊飯器も使えるという家を訪れた。「なんとその家をセットにして映画を撮影中でした。女優さんからサインをいただきました」と笑う藤澤教授。支援が役立ったことを直接見届けることができてよかったという。 今年中に第9号発電所に50キロワット/16極1台の支援を予定している。 昨年と今年、ラブ・アンド・ピースの一員として訪朝した東京経済大学現代法学部2年生の中條朝(はじめ)君は、「対朝鮮支援を行う際、日本の戦争責任と植民地支配を抜きには考えられない。だからこそ、人道支援を行うのは義務だと思う」と話す。「ただ届けるのではなく、1人でも多くの朝鮮の人々と話をして人間としての信頼関係を築くことが大切。その中から、何ができるかをまた考えられる」 一方で、本当に支援を受けるべき人に行き渡っているのか、しこりのような物が残っていたという。 「藤澤先生と朝鮮側の方々が議論している場面に遭遇し、水面下ではたいへんなやりとりをしながら、互いにより良い援助を目指して努力している」と感じたという。一人ひとりと話すことの大切さを痛感した。 発電機を支援するにはばく大な資金が必要だ。それでも、「人間対人間の関係を築くために」支援を続ける藤澤教授ら。「それが人の道だから」。 ◇ ◇ 太陽光発電支援プロジェクトへの募金は、郵便振替(口座名・KOREAこどもキャンペーン)00100―0―398352。水力発電機支援プロジェクトへの募金は、郵便振替(口座名・ラブ・アンド・ピース)00140―4―364885。(文聖姫記者) |