性奴隷問題解決法法案、国会で継続審議へ

民間基金では解決ならぬ


 植民地支配時、日本政府の国策によって性奴隷生活を強いられた女性に国家としての謝罪と補償を促す法案が第154回国会(〜7月31日)で審議入りし、継続審議が決まった。

世界に通じない主張

 同趣旨の法案は、00年4月から5度出されているが審議が行われるのは初めてのことだ。

法案審議後に行われた集会には宋神道さん(中央)や国会議員らが参加した

 日本軍性奴隷問題は、被害者の勇気ある告発によって90年代に世界的な人権問題に発展した。国連の各種人権委員会では日本軍「慰安婦」制度は戦争犯罪であり、戦争犯罪には時効がないことが確認された。98年、人権小委員会のマクドゥーガル特別報告者は責任者処罰、謝罪、賠償、真相究明を日本政府に勧告し、被害者の名誉回復を早急にはかるよう求めた。

 「サンフランシスコ講和条約や2国間条約で解決済み」と、国家責任を拒否する日本政府の主張はもはや世界的に是認されていない。にも関わらず日本政府は「女性のためのアジア平和国民基金(民間年金)」の運営で、法的責任を回避し続けている。

 7月23日に参議院内閣委員会で行われた審議では法案を提出した民主、社民、共産党の各議員らが自民党の森田次夫議員の質問に対して答弁し、法案成立の必要性を訴えた。法案提案者の吉川春子参院議員(共産)は、日本政府が進める「民間基金」は被害者への謝罪、名誉回復にならないと指摘。アジア各国の被害者から責任が不明確だと非難され、受け取りを拒否されていると述べた。

 続いて岡崎トミ子参院議員(民主)は在日朝鮮人被害者として唯一、法廷闘争をたたかっている宋神道さんの聞き書きを涙ながらに読み上げた。「日本に住む朝鮮の子どもと日本の子どもが仲良くするためにも過去の過ちは過ちとしてきちんと反省して謝罪してほしい」「残酷な戦争を二度と繰り返してはならない」と宋さんの思いを代弁。高齢の被害者の気持ちに報いる誠実な答えを出すべきだと強調した。

 議員らの答弁に対し、杉浦正健外務副大臣は「解決済み」と従来の見解を繰り返すのみ。新田秀樹内閣官房参事官は「軍や官憲による慰安婦の強制連行を直接示す資料はない」とまで言い張った。

 傍聴席には宋神道さんや金允玉・「韓国挺身隊問題対策協議会」常任代表、鳩山由紀夫・民主党代表らがかけつけ審議を見守った。

国会図書館改正法も日本の戦争犯罪解明めざす

 一方、7月5日には衆議院議院運営委員会懇親会で継続審議となっていた「国立国会図書館法の一部を改正する法律案」の提案理由の質疑が初めて行われ(非公開)、継続審議が決まった。

 同法案は国立国会図書館に恒久平和調査局を設置し、満州事変(1931年)から日本の敗戦までの間に行われた日本による戦争被害を明らかにしようというもの。調査対象は、日本人を含めた外国人に対する徴用、性的行為の強制、生物化学兵器の開発など日本の戦争犯罪全般を網羅している。

 00年10月に鳩山由紀夫、土井たか子、不破哲三、田中甲氏ら6人の議員が提出。160人を超える超党派の国会議員が賛同者として名を連ねている。

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