インタビュー
定期航路の開設、人の往来・交流
片山善博・鳥取県知事に聞く
環「日本海」地域交流を県政の重要な課題として位置付け、その一環として訪朝した鳥取県の片山善博知事に話を聞いた。
「アリラン」で歴史観知る ―90年以降、日本の知事が平壌を訪れるのは初めてだが。 鳥取県では現在、環「日本海」地域交流の重要な拠点になるためのさまざまな努力を傾けている。これまで「韓国」、中国・吉林省、ロシア・沿海州、モンゴルと交流を深めてきたが、朝鮮とはあまり接点がなかった。そのため今回、交流を推進してその幅を広げようと、県議会議長、元山市と姉妹都市関係にある境港市の市長とともに訪朝した。 ―2年前、自由経済貿易地帯の羅先市を訪れたそうだが、今回、首都・平壌を訪れた感想は。 日本のテレビなどを通じて、朝鮮の雰囲気は少しガチガチしているという印象を持っていたが、実際はそうではなかった。想像以上に発展している。今回覚えた朝鮮語、「百聞不如一見」(百聞は一見にしかず)という言葉どおりだ。 また短い滞在期間ではあったが、朝鮮の人々が民族の文化を重んじていることを痛感した。「アリラン」もそうだが、万景台学生少年宮殿の子どもたちの公演も、自文化とその伝統に対する誇りで満ちあふれていた。 ―「アリラン」を見た感想は。 感銘を受けた。あのように多くの人を1つにまとめるということは、そう容易なことではない。「アリラン」を構想し指導したプロデューサーとは、いったいどのような人物なのかと思った。「アリラン」はとても水準の高い完成作品だ。すべての場面が美しく、構成、内容もよく練られている。日本人でも内容は十分に理解できた。前編は植民地時代、後編は統一問題を描いていたのでは。 日本には、朝鮮の人々の考えがよく伝わっていないようだが、「アリラン」を見ると、朝鮮政府というか国民がどのような歴史観を抱き、どのような価値観を持って生きているかを知ることができた。終幕で流れた歌「われわれはひとつ」には、朝鮮の人々の志向が凝縮されていると思った。 「アリラン」はとても素晴らしい作品だが、日本人から見ると、朝鮮の人とは若干の相違点もある。だから交流も頻繁に行うべきだし、相手側の歴史観、文化、生活習慣を知り理解する努力が求められる。隣近所でも相手をよく知らなければ誤解と偏見を持ちやすい。 ―朝・日間の交流についてどう考えているのか。 国と国の外交はとても大切だ。政府間では真しな討議をし、国民はそれを積極的に支持しなければならない。 しかし、外交ルートだけではだめだ。何か問題が生じ、行き詰まればこう着状態に陥る。そのため外交ルートとは別に、バイパスというか他のルートが必要だ。地域、グループ、人などの別のルートがあれば、両国民間の理解を深めることができるだけでなく、問題を冷静かつ実務的、円満に対処、解決することもあり得るからだ。その方法論を今後さらに考えていきたい。 交流のルートが多ければ、それだけ多くの分野で信頼を築くこともできる。日朝間では多方面的で、柔軟性ある関係を1日も早く築く必要がある。 中央と地方の役割 ―朝・日間では過去の清算問題がいまだに解決されていない。日本ではいわゆる「北朝鮮脅威論」が世論をミスリードし、有事立法の制定といった動きもあるが。 朝鮮の人々がそれに対してどのような見解を抱いているかは正確には知らないが、日本の国会で有事立法のような問題が論議されるからといって、日本社会全体が軍国主義復活の道に進もうとしているわけではない。例えば、われわれのような地方の人との交流を行えば、それがはっきりと分かるだろう。 地域間交流を進めるうえでは、過去の歴史問題をはじめ基本的な問題について認識を深めておくことが必要だ。両国間の懸案問題について言えば、日本では「拉致問題」と関連した世論が存在する。朝鮮ではそれを「行方不明者」として扱っている。いずれにせよ政府間交渉の障壁となっていることに間違はいない。 だからといって、そうした問題の解決に地域があたることはない。基本的な問題は正確に認識する必要はあるが、そうした論議は政府に任せ、地域では独自のことを推し進めていくべきだ。そのような過程で、基本的な問題も自然に浮上していくのではないか。それがバイパスという意味だ。全員が中央政府のようなことを言っていては一歩も進まない。 引き続き交流の論議 ―地域交流の展望は。 朝・日友好親善協会の宋浩京会長と会談した際、地域交流をいかに進めていくかという論議を今後も引き続き深めていくことで一致した。これと関連した実務協議も行った。 われわれは羅先市と境港市の間に定期航路を開設するという構想を持っている。まずは人の往来、交流を増やしていくことが必要だ。 私も機会を見つけて再び朝鮮を訪れたい。次回は平壌だけではなく、地方都市にも行ってみたい。とくに日本海、いや朝鮮東海の沿岸地帯などを回ってみたい。 |