春・夏・秋・冬

 記者になりたての頃、記事は足で稼ぐものだと教えられた。とにかく現場に赴き人に会う。歩き回ってこそネタも拾えるということだ。確かに、現場に行けば、何かと発見もあるし、取材対象との人間関係も深まり、いろいろな話を聞ける。昨今は、インターネットの普及などで、机に座っていてもある程度の情報が得られる。しかし、それに甘んじていては、読者に共感を持たれる記事は書けない

▼今、大阪、愛知、宮城では、朝鮮学校の処遇改善を目指す署名活動が活発に行われている。中心となっているのは、各学校の保護者たち。とくに、オモニ(母親)たちのパワーには頭が下がる。1人で千余人分の署名を集めた人もいる。仕事や家事の合間をぬって、近所の家々を回ったり、駅頭や街頭に出て署名を集めている。まさに、「足で稼いでいる」のだ

▼本紙では、そんな父母ら参加者たちの思いをつづったリレーエッセーを連載中だ。心ないサラリーマンに「邪魔なんだよ」と押されながらも懸命に署名をとるオモニや生徒たち。かと思えば、息子が通うサッカークラブのお母さんたち50人から署名をもらった心温まる話も

▼そこにあるのは、やはり「民族教育を守っていかなければ」という熱い思いだ。そのためには、制度的保障を求める必要がある。子どもたちの将来に関わる問題だけに、オモニたちの運動にも力が入る

▼酷暑、炎天下の中、長時間街頭に立つのがいかにたいへんなことか。そんな中でも奮闘する保護者たち。心ある日本人ならきっと理解してくれるだろう。(聖)

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