大阪朝高の校舎改修費用、指定寄付金の適用を

民族教育対策委、パンフ作成、府に要望


 今年4月に創立50周年を迎えた大阪朝鮮高級学校。7月末から老朽化した校舎や文化会館の改修工事に着手した。改修事業は50周年記念事業の柱だが、費用は同胞の募金でまかなわれる。在日朝鮮人大阪府民族教育対策委員会は、集めた募金を税制上優遇される「指定寄付金」扱いにするため、運動を進めている。

96年、文部省が横やり

 「指定寄付金」とは、学校改築などへの寄付金が個人の場合は所得から控除され、法人は全額損金に算入できる制度。財務省が都道府県知事などの意見を参考に承認する。同省告示によると、学校教育法1条に基づく学校のほか、「1条校に相当する内容の教育を行い、その教育を行うことについて相当の理由があると所轄庁が認める」各種学校も対象となる。

 今まで各地の朝鮮学校では校舎の改築、改修は幾度となく行われてきたが、「指定寄付金」として認められたケースはなく、同胞の経済的負担をさらに重いものにしてきた。

 最近では96年、山口朝鮮学園が下関朝鮮初中級学校増改築工事の際に申請したが、認められなかった。文部省(当時)は、山口県との事前協議の段階で同省の65年通達を根拠にあげながら、朝鮮学校における教育を「相当の理由があるものと認めることは適当ではない」とする学術国際局名義の文書を出し、封じ手を打った(同年8月)。

 その時点で、同じ各種学校である横浜インターナショナルスクールや東京韓国学園には認められていたにも関わらず、朝鮮学校だけを差別したのだ。

65年通達は無効

 文部省の65年通達とは、「朝鮮学校を各種学校としても認めるべきではない」とする悪名高いものだが、朝鮮学校のあるすべての都道府県知事が75年までに認可を与えたことから、通達は事実上形がい化している。

 さらに、00年4月1日には日本政府自らが「地方分権一括法の施行により、各種学校の設置認可が都道府県の自治義務になったため、65年通達は効力を失っている」との見解を発表し、その無効を確認している。(福島瑞穂参院議員が国際人権規約委員会の「最終見解」についての実施状況に関する質問主意書を出した際の答弁書。00年8月)。

 もっとも「指定寄付金」の承認を与える権限は財務省にあるため、文部科学省が横やりを入れる筋合いの問題ではないが、政府が通達の無効性を確認した時点で同省が反対する理由はもはやなくなった。

当然の権利

在日朝鮮人大阪府民族教育対策委が作成したパンフ

 大阪朝高への寄付金が「指定寄付金」の承認を受けるためには所轄庁である大阪府に申請し、最終的に財務省の承認を受けることになる。

 そこでネックになるのは府が朝鮮学校教育をどう認定するかだ。

 その点について府は一定の判断を示してきた。まず89年に大阪朝鮮学園に学校法人の認可を与えている(財団法人の認可は61年)。また、「朝鮮学校は一般的な各種学校とは違う外国人学校」(山登敏男・私学課長、当時)との立場から、授業料軽減補助は「1条校」と同レベルで、振興補助は専修学校並みに支給している。指定寄付金の要件である「相当な理由」を見出しているといえよう。

 これらの経緯から府は現在、「指定寄付金」の適用を求める大阪朝鮮学園の書類を受けつけ、それを財務省に提出する意向のもと、準備を進めているという。

 また、府民族教育対策委は在日本朝鮮人人権協会近畿地方本部と協力し、6月に「指定寄付金」問題に関するパンフレットを作成し、適用の正当性を訴えている。
(張慧純記者)

日本語版TOPページ