支援継続を再確認

北朝鮮人道支援ネットがシンポ


 建国以来最悪の経済状況といわれた「苦難の行軍」時期を乗り越え、徐々に落ち着きを取り戻しつつあるものの、朝鮮の食糧事情は依然として厳しい。国連機関の調査によると、昨年秋の穀物収穫量は354万トン。最低限必要な量である501万トンにはるかに及ばない。加えて国際的な援助も減り続けている。そのような状況を打開し、子どもや女性、高齢者らを助けようと食糧支援を続けている「北朝鮮人道支援ネットワーク(ハンクネット)・ジャパン」が20日、東京都内でシンポジウムを開いた。3人の講師をはじめ発言者らが支援の必要性について強調した。

慢性的に栄養不足

 「状況は大変心配されるものです。現在、食糧援助は急速に減っている」

 孤児院に食糧と医薬品を援助するため5月に朝鮮を訪れた民間救援組織カリタス香港代表のキャシー・ゼルベガー氏はこう指摘した。

 これまで支援のため38回も朝鮮を訪れ、自分の子どもと思い援助を続けてきた。(ハンクネットの資料より抜すい)

 この日上映された、現地の模様を伝えるビデオからもその深刻さがうかがえた。ハンクネットメンバーが昨年9月に訪れた育児院(孤児院)では、栄養失調とすぐにわかる赤ん坊の姿が映し出された。

 先のキャシー代表も、「子どもたちは慢性的に栄養不良で、状況は決して良くなっていない」と語っている。

米国の兵糧攻め

 そうした状況を打開し、少しでも多くの援助を訴えるべく開催されたのが、この日のシンポジウム「私たちは続ける! 北朝鮮人道支援の意義」である。

 ハンクネットを代表して発言した李修二氏はまず、国連人道支援局をはじめとする国連機関のホームページに掲載された資料をもとに割出した朝鮮の穀物生産状況、肥料投入状況などについて説明した。

 98年の「人工衛星打ち上げ」後から、マスコミ論調の影響などで日本からの援助が極端に少なくなったとしながら、そういった中でも国際社会では援助が続けられていた点について指摘した。さらに、そのような状況下でもハンクネットが人道支援の必要性を訴えてきたと強調した。

 また、国際社会からの人道支援が、WFP(国連世界食糧計画)、ユニセフ、国際赤十字連盟などの国際機関、さまざまなNGO(非政府組織)を通じて行われる形を取っており、とくに食糧援助では、朝鮮政府に直接援助される2国間援助を除き、大部分はWFPを通じて行われていると指摘した。

 そのうえで、NGOの中には諸事情から援助を打ち切るところもあり各NGO間で意見の相違もあるが、ハンクネットとしては、食糧を送り続け、援助を続けることに意味があると認識していると語った。

 大妻女子大学の前田康博教授は、朝鮮の経済が戦時統制経済であるとの観点から、より広い意味でこの食糧問題をとらえるべきだと述べ、聴衆の関心を誘った。

 前田氏は、朝鮮戦争を経て、朝鮮は50年以上も米国と対峙してきており、しかもいまだに戦争が終わったわけではなく停戦状態である点を強調。世界の穀物メジャー、石油メジャーを握っている米国と交戦状態にあることで、食糧危機は米国の兵糧攻めによってもたらされたと見るべきだとの分析を展開した。

 そのうえで、食糧問題の究極的な解決方法は、朝米間の交戦状態が1日も早く終わることだと述べた。

難問解決を促す

 最後に発言した在日本朝鮮人人権協会の金東鶴氏は、自分の家族の例をあげながら、在日同胞の置かれている状況について説明。高齢者や障害者の年金問題、卒業生の各種資格取得におけるハンディ、助成金の問題などいまだに残る差別の問題についてわかりやすく話した。

 この日のシンポでは、食糧支援や太陽光発電支援プロジェクトなどを展開している「KOREAこどもキャンペーン」が、2回目となる南北、日本、在日の子どもたちによる絵画展(9月開催予定)への賛同を呼びかけた。

 「日本から人道援助を続けていくことは、(日朝間の)難しい問題の解決を少しでもうながすことにはなっても、それを妨げることには決してならない」という観点から、ハンクネットは今後も朝鮮の子どもたちへの支援活動を続けていく。そのことを再確認するシンポジウムとなった。(文聖姫記者)

 ハンクネットのURL=www.asc-net.or.jp/hanknet-japan/

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