取材ノート
忘れられない6月
今年の6月は忘れ難いものとなった。と言っても、サッカーワールドカップの話ではない。6.15共同宣言発表2周年に際して金剛山で開かれた民族統一大祝典を取材したからだ。
朝鮮で行われる統一行事を取材するのは、1996年8月の汎民族大会以来、実に6年ぶり。当時は、南から参加者があること自体がニュースで、この時も2人の学生が参加しただけだった。だが、今回南からは200余人が大挙押し寄せた。6.15宣言発表前と後の違いを目の当たりにした思いだ。最も大きな違いを感じたのは、北と南の参加者たちが十年来の知己のように自然に語り合う姿だった。 その大祝典で、南から来た1人の男性と話す機会を得た。長期囚送還対策委員会に所属する30代後半の彼に、なぜこのような活動をするようになったのか聞いてみた。 もともと民主化実践家族運動協議会の良心囚後援会に所属していたが、その過程で非転向長期囚の存在を知った。信念を曲げず獄中で何十年もたたかい続けてきた老人たちに、人間的にひかれていったそうだ。何も悪いことをしたわけではない、死ぬ前に故郷に帰りたいという彼らの願いを何とか適えさせてあげたい。そんな思いから、送還運動に携わってきた。 「とても素朴で、長期囚の先生たちに似ている」と、北の人々に会った印象を語り、最初に故郷に帰った元非転向長期囚、李仁模氏の娘に偶然会えたことをことのほか喜んでいた。 彼にとってはじめて接触した北の人は元長期囚の老人たち。しかし、それをきっかけに統一運動に身を投じるようになり、より多くの北の人々と接触できるようになった。 思えば、統一とはこうした出来事が積み重なって、ある日突然訪れるものなのだろう。 |