いつまで続ける在朝被爆者放置
日弁連代表の訪朝、調査に同行した李実根在日被爆者連絡協議会会長に聞く
昨年12月、日本政府は3年の期限を設けて在外被爆者の渡日治療を実施すると発表したが、国交がない朝鮮の被爆者は放置したままだ。高齢で原爆の後遺症に苦しむ彼らの救済に向け実情を調査しようと6月23〜27日、朝鮮被爆者調査代表団(団長=高木健一弁護士)が訪朝。14人の被爆者と支援団体、医師らと面談した。同行した李実根・在日本朝鮮人被爆者連絡協議会会長(広島市在住、73)に話を聞いた。 (張慧純記者) 14人の被爆者と面談
今回、訪朝した高木弁護士は、85年から日本弁護士連合会人権擁護委員会の「在韓被爆者に関する調査研究委員会」委員長を務めている。広島のマスコミ6社も同行した。 日本政府は昨年12月、被爆者援護手帳が日本国内においてのみ有効であることを法令に明記し、3年間を期限に在外被爆者が渡日治療する場合の旅費を補助することを決めた。この決定を受け2月に朝鮮を訪問し、被爆者、被爆者団体に日本政府の決定を伝えたが、彼らは口をそろえて「到底受け入れられない」「日本政府はわれわれに死ねと言っているのかと」と憤激していた。渡日治療というが、日本と国交のない朝鮮の被爆者にとって、実現が極めて難しい「絵に描いた餅」だ。 渡日治療に関しては5億円の予算が組まれ、在朝被爆者については広島市が担当することになっている。しかし、決定から半年たった今も具体化したものは何もない。あまりにも無責任な話だ。 この状況を打破するため日弁連が調査をすることになった。日弁連による調査は初めてのことだ。 朝鮮では、広島での被害者10人と長崎での4人計14人と面談。「反核、平和のための朝鮮被爆者協会」の朱成雲会長と朴ムンスク副会長、放射線医学研究所の医師らにも話を聞き、被害者の苦しみに耳を傾けた。 2000人の被害者 朱会長は日本の調査団に対し、在朝被爆者を放置してきた日本政府の責任を厳しく追及しながら、余命いくばくもない被爆者を救済するよう、声を上げてほしいと語っていた。医師らも病院建設や専門的な医療支援を求めていた。 以前から朝鮮の被爆者団体は、日本政府が在朝被爆者に対する謝罪と補償、人道的援助を実施することを強く求めており、補償は国交正常化前でも可能だとしている。在朝被爆者は70年代からその存在が注目され、95年には「反核、平和のための朝鮮被爆者協会」が結成された。その年に実態調査が始まり、99年に1020人の被爆者が確認された。最近は59年以前に帰った人に対する調査も進み、1953人の存在が明らかになっている。 日弁連は、在朝被爆者の現状と要求を整理した報告書を作成し、今後日本政府に対応を促していくという。 11日に高木弁護士と外務省を訪れ被害者に対する謝罪と補償を求めたが、日本政府の積極的な姿勢は見えなかった。 日本政府は在朝被爆者をいつまで「谷間の被爆者」「忘れられた被爆者」として放置するつもりだろうか。こう着状態にある朝・日関係を打破し、国交正常化交渉を再開するためにも人道問題である被爆者救済に1日も早く取り組むべきだ。 支援団体発足へ 12日に広島で報告を兼ねた記者会見を開いたが、それを見た「被爆教師の会」から支援団体を立ち上げたいとの呼びかけがあった。日本各地に会員を持つ団体だ。 20年間この問題に取り組んできたが、支援団体が結成されるのは初めてのことだ。在朝被爆者の存在をたくさんの人に知ってもらうことが解決の第1歩になる。今後も支援の輪を広げていきたい。 |