唯一人の女子ボクシング部員
「予期せぬ波紋も自分信じてやり抜く」
大阪朝高 李章妃さん
彼女の名前は李章妃さん(高級部2年)。1年生の時、同ボクシング部でマネージャーを務めた。 李さんは、今春、本社主催の第24回在日朝鮮学生「コッソンイ」作文コンクール高級部散文部門で、「唯一の共通点」というタイトルで見事1等賞に輝いた。 この作品は中級部3年生の時、朝鮮人である自分の将来が見えず、日本人に帰化しようと心の中で葛藤してきた彼女がその夏、WBC世界スーパーフライ級王者に輝いた洪昌守選手との出会いを通じ、民族の一員として立派に生きていこうと決めるまでをリアルに描いた。 女子ボクシング競技は04年アテネ五輪で公開競技に、08年北京五輪から正式競技になる。朝鮮では以前から人気スポーツの1つ。日本の高体連でも今学年度から各校ボクシング部に女性選手を育成するよう奨励しており、普及状況によっては早ければ来年度にも全国大会を開く意向だ。 洪選手との出会いを通じボクシングに興味を持った李さんは、コーチの梁学哲監督に誘われたとき迷いはなかった。しかし、女子選手の誕生は彼女の周囲で予想せぬ波紋をよんだ。練習もままならず傷ついた日々も続いた。そんな時、ある先輩部員の「自分自身だけを見つめろ」との励ましに心が和んだという。 29人の男性部員に混じり、1人黙々とサンドバックにパンチを叩き込む李さんの姿は、自分が歩む道に迷いはないとの意気込みが伝わってくる。 「まだ、日は浅いが、毎日が楽しい。ボクシングは色々なことを教えてくれました。一つは、リング上に立つのは選手一人だが、そこに至るまでには部員たちみんなの力が必要だということ。きつい練習もお互いが励ましあいながら、苦楽をともにできる素晴らしいスポーツです」 そしてもう1つは「努力すれば何事も成し得る」という信念だという。 「腕立て伏せもままならなかった私ですが、やればできるという根気がつきました」 練習を終え、笑顔に戻った李さんは将来の目標について「もっとうまくなってからじっくりと考えたい」と恥ずかしそうな表情で語った。(貴) |