それぞれの四季

熱狂ワールドカップ

「啓先


 ワールドカップが終わった。私も俗に言う「にわかサッカーファン」になった。夫が大のサッカー好きで、県の蹴球団や支部のサッカー部で活躍しているので、全試合特別解説付きで楽しんだ。はじめは「今のなんで笛ふかれたの?」「オフサイドってなぁに?」と聞いていた私が、「ボールを持ったらすぐ蹴って!」「この選手はセンタリングがうまいね」などとわかったようなことを言うまでになった。

 私をこれほどまでにもサッカーに夢中にさせたのは、きっとウリ選手の快進撃だろう。「オー、コリア、オー、コリア」。真っ赤なスタンドの声援が、ウリ選手の闘志が、ブラウン管を通して私の魂を揺さぶった。試合を見ている間、胸の鼓動が高まり足が震えた。試合終了の笛とともに夫と1歳5カ月になる娘と3人で抱き合って喜びをかみしめた。理屈ではなく、北とか南とか関係なく、私を突き動かしたもの―内に流れる朝鮮民族の血、誇りが体中を駆け巡ったのだ。事実何千、何万の在日同胞が、わが民族の活躍に胸を躍らせたであろう。また総聯と民団が共に応援するために、南の地で肩を並べた。こんなことは今までなら考えられなかったことだ。

 いろいろなこだわりやしがらみ、情報操作によって私たちは翻弄されつづけてきた。でも私たちはすぐに1つになれる。いや、1つになるのは必然なのだ。全世界が熱狂した今回のワールドカップ。私たち在日同胞にとっては、忘れかけていた朝鮮民族の「血」というものを強く感じさせてくれた、一生忘れることのない熱い熱い1カ月だったのではないだろうか。(神奈川県・主婦)

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