ざいにち発コリアン社会

在日のルーツ再確認、民族性の継承へ

総聯東京北支部管下 1世から聞き取り調査―朝大歴史地理学部の学生たち


1世の話に熱心に聞き入る
 「民族性を守るためには、1世同胞らの強制連行、生活体験などを記録に残して後世に伝えていく必要がある」――。朝鮮大学校歴史地理学部の4年生6人が、6月初から約2週間、総聯東京・北支部の協力を受けて、管下同胞らの聞き取り調査を実施した。同学部の社会実習の一環として行われたもので、一昨年に続き2回目の実施となる。実習責任者の尹正浩くんは、「1世らの実体験をひとつでも多く記録に残していく必要性を感じた。同時に、そうした活動の過程を通じて、1世らの愛族愛国の精神を受け継ぐことができると思った」と話す。実習参加者は大きな手応えを感じているようだ。

 調査を実施した歴史地理学部の学生6人は全員が3世。1世から彼らの生き様について話を聞くのは初めてのことだ。

 学生たちは聞き取り調査に先立ち、朝・日近代史、在日朝鮮人運動史などを再学習し、聞き取りのためのマニュアルなども作成した。

 2班に分かれて同胞宅を訪問し、十数人の1世から、故郷を離れ渡日を余儀なくされた経緯や、人間扱いされなかった日本での生活状況、そして解放後これまで何を心の支えにして生きてきたかについて聞くことができた。

 インタビューを受けるという慣れない体験にとまどう場面もあったが、熱心に尋ねる学生たちに、1世たちもわかりやすく丁寧に答えていた。

朝・日近代史、在日朝鮮人運動史について再学習する生徒たち

 質問は、解放後も含めて、日本の同化政策、民族差別の内容に集中した。日本の過去の対朝鮮敵視・べっ視政策をきちんと掘り起こし、こんにちの問題として問うためだ。同時にその内容が、希薄化している同胞らの民族意識を高める材料にもなるからだ。

 日本の植民地支配時代、故郷で教べんをとっていた際に、日本の「皇国臣民化政策」により、朝鮮語ではなく日本語で授業を行った悔しさや、日本語の使用や神社参拝などを強要され、それに反発して日本人から受けた仕打ちなど、国と民族を奪われた1世たちの体験談に、学生たちは「亡国の民」の悔しさ、その意味をあらためて知ることができたようだ。

 また解放後、自宅を国語講習所にして地域の子どもたちに民族の言葉と文字を学ばせた思いや、日本で生きていくためには民族の誇りを持つことが1番重要だという話を聞くこともできた。

 姜宗福くんは、「教科書などを通じて知識としては知っていたが、やはり生々しい体験だけに衝撃も大きかった。と同時に、在日同胞のルーツを確認することもできた。これが重要だと思う。若い世代の間で民族性が希薄化している要因のひとつに、亡国の民の哀しみをよくわかっていないことがあると思うからだ」と語っていた。

 また申相日くんは、「1世の話を聞くためにさまざまな準備をしてきたが、まだまだ知識不足」と言いながら、「これを克服する過程で、1世らの愛族愛国心を受け継ぐことができ、ゆくゆくはそれが豊かな同胞社会を築いていくための第1歩になるのでは」と述べていた。

 ほかにも、「ひとつでも多くの証言を集めて記録に残し、後世に伝えていく必要性を感じた」(李章垂くん)、「今後は解放前だけでなく、民族教育の出発・発展過程など、解放後に同胞らが民族を守り同胞社会を築いていった話なども記録に残していく必要がある」(金憲柱くん)、「日本政府は一日も早く朝鮮人民に謝罪すべきだ」(李博貴くん)などと話していた。

 「民族性の継承」と「新時代の創造」という大きなテーマに取り組む学生たちだった。
(羅基哲記者)

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