朝・日市民の友好の象徴に

平壌市万景台区域岡山県民ブドウ園建設に尽力した2氏に聞く


 平壌市万景台区域に今年4月、市民レベルの友好の象徴となる「善隣友好・岡山県民ブドウ園」が建設された。日本から送られた1001本の苗木は、朝・日市民の手によって1つ1つ植えられた。同ぶどう園建設に尽力してきた元岡山県議会議員で「日本と朝鮮の友好を進める会」の井本丈夫代表と、花澤ぶどう研究所の花澤茂さんにそれぞれ話を聞いた。(金美嶺記者)

民間外交の第1歩

「日本と朝鮮の友好を進める会」 井本丈夫代表

 今、日朝関係は国家間レベルで見た場合、決して良好だと言えない。

 これまで、9回朝鮮を訪問しながら感じたのは、こうした状況にあって、市民の果たす役割が大変重要になってくるのではないかということだった。

 今回のぶどう園建設の話が持ち上がったのは3年前だ。平壌市の郊外にぶどう園を建設したいのでぜひ協力してほしいという要請を朝鮮側から受けた。

 初めは、多くの人の協力を有することなので、日本の状況を考えた時、非常に難しいと思ったが、朝鮮側と話を重ねるうちに、平壌に岡山市民の友好の象徴として残せるのなら大変すばらしいことだし、可能だと思った。さらに、ぶどうは岡山の特産である。

 昨年12月の訪朝の際、万景台区域にぶどう園を建設することが決まり、日本に帰ってすぐに、その旨を「進める会」の役員たちに伝えた。すると、消極的だった人たちからも、受けた以上はぜひ、実現させよう、という意見が出た。

 その後、一大事業として街頭宣伝をするなど、日本市民はもちろん、在日朝鮮人の方々にも協力を求めたところ、思ったより反応はよかった。

 私は、朝鮮との関係について過去の植民地清算をしたうえで、両国の国交正常化を1日も早く行うべきだと考えている。

 日本では今、有事法制の議論が進み、政治も米国追随の外交を行っているが、アジアの隣国こそ大事にすべきだ。

 今回、岡山で成しえたことは「たかが、ぶどう」ではなく、平和のための民間外交の大きな1歩だと思っている。これからも見守り協力していきたい。

県民の思いを代弁

花澤ぶどう研究所 花澤茂さん

 今回、平壌には「桃太郎」(瀬戸ジャイアンツ)など5品種を私の研究所から持っていった。

 当初、ぶどう園建設の話を聞いた時、難しいのではないか、と思った。というのは平壌と岡山の気候的な違いなどだ。

 だから、岡山産の「桃太郎」を果たして平壌で育てられるだろうか、という心配が先に立った。

 そうした条件的な問題はあったものの、このぶどう園建設の目的が、県民の思いを代弁し、岡山特産の「ぶどう」を平壌の土で育てようということだと聞いて、協力したいと思った。

 今回、平壌に送った苗木は、私が25年間研究してきたものを土台にし、平壌で育てられるよう耐寒性や、あらゆる病虫害にも負けないよう改良に改良を重ねたものだ。

 これまで、長く研究してきながら、「桃太郎」は世界1のブランドだと自負している。

 ぶどうといえば、エジプト産のマスカットが有名だが、「桃太郎」は、マスカットにくらべ種がなく、皮ごと食べられるのが特長だ。皮にはポリフェノールなどの栄養分が含まれており美容と健康にもいい。もちろん、味についてはいうまでもない。

 私にとって、ぶどうは人生そのものであり、分身のようなものと言っても過言ではない。その分身が日朝友好とアジアの平和の手助けになるのなら、これほどうれしいことはない。

 朝鮮について、知識はそれほどなかった。しかし今回、ぶどう園建設に関わりながら、朝鮮の関係者から「今後、技術者を育てていくことが、花澤先生の思いを継ぐことになる」と言われ、その言葉を深く受け止めている。

 また、一緒に作業した朝鮮の農場員たちの笑顔と、作業後に交わした握手の感触を忘れないようにしたい。

 今度訪ねる時は、世界の人が驚くほどすばらしいぶどうの木が農場一杯に広がり、実を結んでいることを願い、今後も協力していきたい。

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