商工人自身が主導する21世紀のスタイル確立へ

金基次・商工連理事長に聞く


 7月1日からスタートした「新世紀商工会創造運動」の目標と事業内容などについて、商工連の金基次理事長に聞いた。(羅基哲記者)

企業の維持、発展を

 ―まず、運動のスタートに際してどのように現状を認識しているのか。

 同胞社会では、世代交代が進むと同時に商工人が多くのウエートを占めるようになった。商工会のサポートのもと、企業を大きく発展させたところもあるが、バブル崩壊の後遺症、近年の日本経済の低迷などによって倒産・廃業、一時休業に追いこまれたり、朝銀の破たんから小口の融資すら得られなくなった同胞企業も少なくない。今後さらに、時々刻々と深刻化していくことが予想される。

 そこで、そうした現状を打開し、1人でも多くの同胞商工人の経済・経営活動をサポートしようと、今回の運動を展開する。

 商工会ではこれまで税金問題を中心に同胞らの企業権、生活権を守る活動をしてきたが、これまでにない厳しい経済状況の中で同胞らの企業維持、発展を後押ししていくためには、「経営支援」にも積極的に取り組んでいかなければならないと痛感している。

企画から総括まで

 ―運動の目標は。

 新しい世代をはじめ幅広い同胞を網羅した「同胞業者4万人ネットワーク」を築き、同胞経済圏を形成、拡大しながら経営支援を行っていくことだ。商工会では時代と同胞らの要求に応えられる、民族経済団体としての人と組織、事業方法を模索し、21世紀型のスタイルを確立していくつもりだ。

 そのスタイルは、次の3つをイメージしている。

 1つ目は、「商工人主導型の組織」だ。

 これは企画から始まり対策、推進、総括に至るまですべてのことを、同胞商工人が主導になって商工会職員とともに実行することを指す。

 経済・経営事業に精通し、多方面での人脈を持つ商工人が主導になることで、同胞企業の発展により貢献できる新たな展開も生まれてくるだろう。それには当然、商工会職員の努力も要求される。

自治体からの情報収集

 2つ目は、日本の行政、自治体との連携を深めて、同胞企業に役に立つ情報の収集と提供、当然得られる公的助成金(制度融資など)は何かなどを探っていく「地域対応型の組織」だ。

 例えば、自治体などには企業活動を支援するさまざまな窓口があるが、それをフル活用しようということだ。

 雇用対策の場合、岡山地域商工会では同胞企業に対し、中小企業雇用創出人材確保助成金制度の活用などをアドバイスした。

 一方、関東を中心に1都11県で開催された「焼肉フェスタ2002」(4月末〜5月末)や、埼玉県所沢市で行われた「牛肉消費拡大フェア」(2月)では、行政や自治体から助成金を得ることができた。いずれも同胞商工人主導で、企画を実行したものである。

 3つ目は、「国際舞台への進出」。出店をはじめ生産、共同仕入れなど海外市場は広く、参入の余地も大きい。大阪ではすでに、低コストという利点を生かして中国などに進出している同胞企業もある。

 この分野はまだまだ手探り状態だが、さまざまな情報交換、交流などを通じて、投資の可能性を探っていきたい。

主な活動内容

 ―主にどのような活動をしていくのか。

 第1は、目標にもかかげた「同胞業者4万人ネットワーク」を築き、同胞経済圏を形成、拡大しながら経営支援を行っていくことだ。

 「4万人ネットワーク」とは、新しい世代をはじめとする幅広い同胞を対象に、業者間のマッチングサービスなどを拡大し、新たな会員を拡大しつつ、豊かな同胞経済圏を形成、維持、拡大することだ。また税金、制度融資の問題とともに相続問題にも力を注ぎ、同胞らの財産が維持されるよう力を注いでいく。

 第2は、民族性啓蒙運動を展開していくこと。新しい世代は、1世同胞らが築いた民族性と相互の扶助の精神を、新世紀の同胞企業の「経営理念」として受け継ぐことが重要だ。商工人は企業主である一方、世帯主でもあるため、民族性あふれる豊かな同胞社会を築くうえで大きな役割を果たすことができるだろう。

 そのための「役員セミナー」や、幅広い同胞らが集う「コリアンコミュニティー」などを催していきたい。これには、青商会をはじめ新しい世代の団体と経済機関との協力が必要だ。

 第3は、民族大団結の立場から、民族の団結と対外活動を展開することだ。

 6.15共同宣言を後押しする活動や、制度融資の内容を1つでも多く知らせてあっせんし、同胞の企業権を守ることなどだ。

 第4は、「4万人ネットワーク」の形成、個別訪問を行いながら、会員を拡大していく。

 対象は総聯傘下の同胞だけではなく、民団、未組織の同胞、日本国籍保有者も含まれる。

 北海道、岡山、福岡ではここ数年間、会員を着実に増している。

 先の「焼肉フェスタ2002」には、これまで商工会と付き合いのなかった同胞企業も多数参加しており、運動期間中、こうしたことを取っかかりに、業種別に会員を拡大していきたい。

機構研究会も発足

 運動は1段階(7月1日〜8月31日)、2段階(9月〜12月)、3段階(来年1月〜3月31日)に分かれ9カ月間展開し、同年4月予定の商工連合会理事会で総括する予定だ。模範的な単位を評価したい。

 一方、これらの問題と関連して、県および地域商工会と業種別組織を強化し、同胞経済圏の拡大を見据え組織機構を新たに改編するための「商工団体機構研究会」(責任者=李奉国商工連副会長)も設置された。

 う余曲折も予想されるが、できることから1つずつ積み重ねていき、21世紀型の運動のスタイルを築いていきたい。

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