生活相談 きほんの き―7

Q 「特別永住資格」他の資格との違いは?

A 在留期間、生計活動に制限なし
しかし、日本の自由裁量 退去強制もある不安定な資格


 在日同胞の「特別永住資格」は、日本国民の居住権とは根本的に違います。前回も指摘したように「出入国管理及び難民認定法」(入管法)の特別法として1991年に制定された「日本国との平和条約に基づく日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特別法」(入管特別法)で担保されている資格に過ぎません。

 ときどき永住権という方がいますが、これは大きな間違いです。「特別永住資格」とあるので、何か特別に処遇されるような期待も生じるかも知れませんが、「入管法」の特別法に依拠するという意味に過ぎません。

 入管特別法の「特別永住資格」と、入管法に定める「永住資格」は基本的には同じものと言えます。

 違いは「特別永住資格」者の場合、退去強制(国外追放)事由の1つである一般犯罪が7年以上の刑罰に緩和されていることと、再入国許可の期間が4年間に優遇されている2点に過ぎません。

 もっとも重要で基本的な点である@在留期間に制限がないこと、A生計のための収入を得る活動に制限がなく、自由に活動できるという点はまったく同じです。

 ときどき「特別永住資格」を取得できないかという相談を受けますが、前述したように入管法の「永住権」と基本的に同じですのでそれほど悩む必要はないでしょう。また、この資格を取得できる人の身分は、法により特定されているので、まず無理でしょう。

 注意すべき点は、「特別永住資格」はその言葉通り資格なので、不本意ながら日本国の法務大臣に「特別永住資格」の許可申請を行い、許可されることによって在留しているという事実です。

 つまり、子どもが生まれた場合、出生から60日以内に許可申請をしないと退去強制の対象になってしまいます。もっとも、実務的には外国人登録の申請と同時に許可申請書1枚を提出するだけで済みます。

 在日同胞は、入管法による管理と規制を切実に感じていないようです。その理由は、日本で生まれ育った多くの在日同胞が、入国に関わる大変な手続きや規制に接点がなく、また在留資格に制限を受けない永住資格を持ち、現在退去強制される人がほとんどいないことにあるようです。しかし、政治活動の内容によっては、退去強制の対象となることを言及しておきます。

 入管法とは、外国人の入国と滞在、出国を管理・規制する法であり、外国人の出入国に対する日本政府の基本政策を実現する法です。

 日本政府の基本政策は国益第1主義で、外国人に対する処遇は日本国の主権の問題なので、自由裁量ができるという立場です。国益に合う外国人のみの入国と在留を認め、不利益な外国人は入国を拒絶し、滞在している者は退去強制で排除するということです。

 この方針は、在留資格制度の活用で実現します。

 在留資格は、1つだけの活動を許可する一般的な在留資格と住のつく、定住・永住資格に大別されます。

 住のつく資格は、生計のための収入を得る活動も自由ですが、一般の外国人にはまず与えられません。日本人または特別永住者の配偶者等が主ということになります。

 在日同胞の在留権は一般の外国人と比較すれば非常に有利で安定していますが、居住権ではないため、退去強制もあり、不安定なものです。

 私たちがなぜ、在日なのかを思う時、日本政府は日本国民と同様な居住権を保証する責務があり、私たちはそれを要求する道理を持っていると考えます。(チェ・ヒョンギル・行政書士、在日本朝鮮人人権協会会員、同胞法律・生活センター相談員)

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