春・夏・秋・冬 |
新聞もテレビも、ラジオも週刊誌もワールドカップ一色。「オリンピック? 野球? 比較にならない。スポーツ最大のイベントだ」と、まったく認識が足らないとばかりにいい切っていた知り合いのイタリア人記者の顔を思い出してしまった
▼しかし、その熱気の裏で福田官房長官ら政府首脳の「核保有」発言や防衛庁の個人情報リスト問題など、日本社会の有り様を根底からくつがえしかねない重大な問題が影に隠れてしまっている。とりわけ後者は、「市民不在の論議」と批判の強い有事法制制定の動きが本格化しているなかでのものだけに、神経質にならざるをえない ▼偶然、20世紀を代表するイタリアの思想家・革命家のグラムシを日本に紹介し、生涯、社会主義運動の再生を訴え続けた石堂清倫氏の「わが友中野重治」を読んだ。そのなかで、1942年の満鉄調査部事件で検挙された時の模様が詳細に語られている。事件は当時の関東軍がでっち上げたものだが、彼らがその元にしたのは、今回の防衛庁事件と同じように作成されたリストだった。同年、ジャーナリストや文化人たちが一網打尽にされた横浜事件も同様である ▼ストーリーは軍部・内務省が綿密に作り上げ、拷問によって「自白」させるという、古典的かつ常とう的な方法 ▼小泉首相は、折に触れて「自由主義社会。どんな論議も結構」と口にするが、その裏で発言者、その内容が逐一、整理・リストアップされているかと思うと、これはもう戦前そのものだ。重大性に比べて追及も弱い。1人や2人の処分で事は済まない。(彦) |