全30巻の刊行終えた「朝鮮大百科事典」

90のジャンル、10万5600の見出し語


 このほど、新たに編さんされた「朝鮮大百科事典」(全30巻)。労働新聞(5月6日付)は、その意義について「後世まで受け継がれる貴重な文化財産」「人工衛星の打ち上げに匹敵する民族的出来事」と強調した。

白頭山1号運搬ロケット

 朝鮮で初めて百科事典が出版されたのは1970年代初。「百科全書」(上・中・下)である。その経験を基に、80年代初には「百科事典」を編さん・発行した。

 今回、完成した「朝鮮大百科事典」の編さんは、88年から始まった。

完成した「朝鮮大百科事典」

 編さん局の康華国副主筆(60)は、その経緯と背景について次のように語った。

 「88年と言えば、帝国主義の反社会主義策動が激しく繰り広げられていた時期だ。一部の国では、朝鮮に対する誤った資料を流し、その権威を失墜させようとする言説が目についた。だからこそ、朝鮮の社会制度と人民生活の本当の姿を、正確に伝える必要があった」

 さらに、「百科事典」発行後、新たに多くの革命歴史資料が発掘され、それを補充する必要もあったという。

 さらに檀君陵や白頭山山脈の発掘、そして高麗医学や動植物の研究を通じて他の分野でも新たな資料が出た。

 こうした状況を踏まえ、編さんすることになった「朝鮮大百科事典」は、政治、経済、文化、科学技術、軍事など朝鮮の社会、生活のあらゆる分野に関する、概括的な知識が得られることを目標にした。

 その結果、学科目(ジャンル)数は90余を数え、見出し語の総数は10万5600を超える。収録された人物資料は5200件、写真などの資料は2万5000余点に達する。

 まさに規模と形式、内容において朝鮮建国以来、最大、国宝級の大事典と言える。

 「1日に見出し語を10個ずつ探して読んだとしても、30年以上はかかる」(康副主筆)

 見出し語の中には、98年8月に打ち上げられ、21世紀の朝鮮の科学技術発展の潜在力を示した人工衛星「光明星1号」の名も出てくる。それを運搬したロケットは「白頭山1号運搬ロケット」。また「非転向長期囚」は「統一愛国闘士」と表現され、本紙「朝鮮新報」も含まれている。

ばく大な労力、時間と資金

 100近いジャンルのさまざまな知識が集大成された大百科事典の編さん・刊行事業には、ばく大な労力と時間、資金が費やされた。

 天然記念物に指定された一本の木を撮影するために、奥深い山々を歩き回ったカメラマン、国内すべての郡と里を2、3回は訪ね歩いたという地理編集部記者、金日成主席や金正日総書記の業績資料を求めて、1人の縁故者を探すために数十の村を回って数百人に取材した革命歴史編集部記者、編さん局の依頼で慣れないカメラを肩にアフリカのジャングルを駆けずり回った在外代表部員もいたという。

 このような過程を経て、94年に第1巻を発行、今年2月までに全30巻が発行された。当初は、97―98年までに全巻を発行する計画だったが、建国以来、最大の試練の時期である「苦難の行軍」を繰り広げなければならなかった事情から遅れた。

 金根煥記者(57)は、当時の状況について次のように語る。

 「とくに食糧事情が厳しかった。弁当箱の代わりに、夜を徹して書いた原稿をカバンの中に入れて出勤した。また紙の問題が引っかかり印刷が大幅に遅れた。われわれは1日も取材を休んだこともなければ、ペンを置いたこともない」

 編集員と財政担当者らは、すべての資材が不足するなか、その解決方途を自ら探し出し確保した。

 こうした 努力の結晶 によって、「朝鮮大百科事典」はこの世に生まれたのである。 (羅基哲記者)

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