取材ノート

他人事でない有事法制


 恩師から「便り」が届いた。といっても手紙のたぐいではなく、反核平和社会の実現を願って発行し続けている「地球の一点から」というミニコミ紙である。

 大学定年退職後、それまでの定期刊行が不定期になり6号目になる。しかし通号で106号を数えるから、その地道な活動には改めて敬意を表してしまう。それとともに驚かされるのは、年を取ったとはいえ衰えぬ行動力である。

 元来、自由民権を中心とした文学評論が専門だが、避けては通れぬ日本の植民地文学研究、そして同時に日本の侵略の過去にも向き合ってきた。朝鮮にもしばしば足を運んでいる。

 その恩師、今号に一部の新聞に掲載、紹介されたものだが、「二一世紀の象徴的発端 同時多発テロと『報復』戦争」という文を巻頭に掲げ「米国が、こんどの『報復』戦争の開始と続行によって世界の歴史に、またアメリカの歴史に消すことのできない汚点を記した」と次の2点に言及している。

 「第一、『報復』のための戦争は国際法上、許されていない違法の行為」であり、「第二は米国が、その『報復』戦争で、ほとんど一方的に無残な殺傷を行っていること」。

 そして「同時多発テロと米国によるアフガン『報復』戦争は、二一世紀にとって何を意味するのだろうか」と問い掛け、「(自爆テロは)『アメリカの平和Pax Americana』に対する社会的貧者あるいは非抑圧者の正義と公平を求めての絶望的な抗議」であり、「報復戦争」は「絶頂を極めるに至った『アメリカの平和』を維持しようとする、なりふり構わぬ反動だ」と結論づける。

 米国はその後「悪の枢軸」発言へとエスカレートし、その米国の秩序維持のために、日本は朝鮮を前提にした有事(戦争)法制論議を国会で始めた。他人事では片付けられない動きである。(正)

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