人権協会と青商会共催

東京で教育セミナー


 在日本朝鮮人人権協会の連続セミナー「もう我慢できない外国人学校差別―その法的地位を考える」が11日、東京・豊島区民センター文化ホールで行われ、300人が参加した。民族教育支援を活動の柱に据えている在日本朝鮮青年商工会も共催、各地から会員や民族教育担当者らが集まった。セミナーでは外国人学校の法的地位確立のために尽力している保坂展人衆院議員(社民党)や、土屋公献・日本弁護士連合会元会長、そして朝鮮、中華、ブラジル人学校をはじめとする外国人学校関係者が発言。日本政府に差別を強いられている外国人学校同士手を取り合い、確固とした教育権利を獲得していこうと強く呼びかけていた。

怒り、危機感

「今こそ外国人学校の法的地位確立を」。発言者は一様に日本政府による差別を強く批判した

 セミナーではまず、朝鮮学校に対する差別を「重大な人権侵害」と認定した日本弁護士連合会の調査報告書(98年)作成者の元日弁連人権擁護委員会委員長の鈴木孝雄弁護士が、「二つの国連勧告と外国人学校の子どもの学ぶ権利」と題して報告を行った。

 これまで子どもの権利委員会をはじめ、国連の各人権条約審査機関は日本政府に対し、朝鮮学校への差別是正を4度にわたって勧告している。

 鈴木弁護士は、国連の人権条約を批准している日本で外国人学校が差別を受けているにも関わらず、これが放置されている所に問題の根深さがあると指摘。「日本では民族文化の尊重、不可侵が常識になっていない。1番深刻な問題は、外国人学校に通えない子どもたちが自分の文化を失っていくことだ」と強調した。

 また、国会の場で日本政府の責任を追及してきた保坂議員は、同じ社民党の福島瑞穂参院議員が内閣に質問趣意書を出し、朝鮮学校を各種学校として認めるべきではないとした1965年通達の無効を確認したことを紹介。「文部科学省の硬直した考えも運動によって改善されつつある」と指摘しながら、今後も力と知恵を合わせ、世界の流れに逆行する日本政府の姿勢を追及していこうと呼びかけた。

日本自身の問題

 リレートークでは外国人学校関係者が各種資格、助成面で差別を続ける日本政府に怒りをぶつけた。

セミナーには300人の同胞、日本市民らがつめかけた

 李昌興・総聯東京都本部民族教育対策委員会事務局長は、同胞の子どもたちの夢を最大限生かせない要因の1つに、朝鮮学校に対する日本政府の制度的な差別があると指摘。現在、朝鮮学校の運営は保護者や地域同胞の負担で成り立っているが、限界に達しており、朝鮮学校の法的地位確立は急務だと訴えた。

 また、東京中華学校の張建國副理事長は、同校の小学校児童のうち8割が日本国籍者であることを紹介。日本政府が否定する外国人学校の高等教育機関への受験資格はすでに外国人学校だけではなく、日本人自身の問題になってきており、すべての子どもに教育を施すことを定めた憲法にも違反していると批判した。

 また、ブラジル人児童が通う群馬・日伯学園の高野祥子校長は、1人当たり月額2万5000円の授業料が保護者の家計を圧迫している現状を紹介した。「4、5人の子どもを抱える親もいる。学費を工面するため早朝から夜遅くまで働き続け、子どもとのスキンシップをはかれない保護者も多い。非行に走る子や日本の学校に転校せざるをえない子も出てきている」と悩みを吐露。「外国人に働き手を頼っているこの街にもふりかかってくる問題だ。子どもたちに学ぶ機会を与えてほしい」。ビデオレターで切々と訴えた。

社会的責任

 「一人ひとりの人格も、その属している民族の文化をもって初めて確立できるものであり、文化を奪われ、他人の文化を押し付けられたところには人格の確立もなく、そこには偏狭の支配と隷属しか残らず、人間としての尊厳はありえない」

 質疑応答の後、結びのあいさつをした李英一・青商会副会長は、日弁連報告書の一文を紹介。「私たちは1世の代を受け継ぎ、次世代に豊かな同胞社会を引き渡す社会的責任を負っている。ウリハッキョをはじめ外国人学校の1条校と同等の法的地位獲得のため全同胞的な運動を推進していこう」と強く呼びかけた。

 なお、集会後、保坂議員と青商会、人権協会会員たちとの懇談会が持たれた。

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