仕事は楽しく自由にでも厳しさ忘れない
ベーカリーショップ店経営―李光武さん(下関地域青商会副会長)
山口県下関市でベーカリーショップ3店を営む李光武さん(36)。山口朝高を卒業し20代初めにこの道に入った。広島での修行時代などを経て、同胞社会でも珍しいパン職人に。現在は店を切り盛りしながら、地域青商会副会長も務める。地域1番の繁盛店になることが目下の目標だ。
ニーズに応えること
「最初は3年間だけ手伝うと約束したんです。でも3年たって軌道に乗る前にアボジが倒れてしまった。軌道に乗るまではと続けてきた結果、ここまで来ました」 李さんがこの道に入ったのは21歳の時。実家がパン屋を営むようになってからだ。 それまではペンキ職人をしていた。180度違う未知の世界に飛び込むにあたり、まずは広島の知り合いの店で1カ月間、基礎をみっちり学んだ。その後は実家に戻り、営業のかたわら、あらゆる機会を利用して修行を積んだ。講習会があるといえば、どんな所にでも足を運んだ。メーカーを通して店に講師を呼ぶこともあった。 駆け出しの頃に始めたこの習慣は今でも続いていて、店では定期的に講習会を開く。「常に消費者のニーズに応えていくためには、次から次へと新しい商品を開発していかなければならないから」という。 材料、自然にこだわる
ヘルスベーカリー勝谷店(勝谷新町)、同唐戸店(赤間町)、ブレッドハウス(一の宮町)と、いまや下関市に3店舗を有する有限会社・大光の代表取締役だが、ここに至るまでには「人の倍は働いた」と話す。パン屋の朝は早い。生地を作って、発酵させ、焼いていく。朝7時の開店に焼きたてのパンを出したいという思いから、5時には仕事を始めていた。 「朝の5時から夜7時まで、1日14時間働いた。これを7年間続けました」。淡々とした口ぶりだが、人一倍努力した結果、いまがある。 いい商品を作っていくための研究は欠かさない。どんなものが売れるかを知るために、繁盛店の視察にも赴く。材料にもこだわり、粉、水、砂糖、塩などすべて自然のものを使っている。 そうして作られるパンは1日1店舗あたり1000個。メインはやはり食パンだが、スティック状のパンに自家製バタークリームの入った1品は日に300個は売れる。 「誰にも負けないで」
1にエンジョイ、2にフリーダム(自由)、そして3つ目がシビア。仕事をする上で心がけている3つの事柄だ。 仕事は楽しく、自由にのびのびと行うのが理想だが、だからといって、厳しさを忘れてはならない。「仕事ではもちろん、遊びでも、なあなあはダメ」 当然のことだが大切なのはプロ意識を持つことだ。パートも正社員も、お客様に対する責任、仕事の重さに差はない。従業員には「誰にも負けない仕事をする」ようはっぱをかける。 その中でも「エンジョイする」ことを忘れないようにする。その兼ね合いが大切だ。例えば、パートの主婦などには収入をすべて生活費に回すのではなく、半分は自分のために使うよう勧める。「余裕を持って、仕事を楽しんでほしい」からだ。 立地と人が一番大切 新店舗を出す際には、立地と人に1番気を配る。 立地は人の流れだけではなく、「(風水の)気の流れ」も同時に考える。3店目の「ブレッドハウス」の場所を決める際にポイントとなったのが、車の流れがゆるやかなことだったという。「単に車の量が多いだけでなく、自然に店に足が向くような流れが必要だ」。 人についてはこう言う。「新しいことを始めようとする時、人・物・カネが自然と集まってくる。商売がうまく回転すれば、人も育つ。育てば店を任せられ、事業も拡大できる」 現在、弟が北九州の店に修行に出ている。つねに3年後、5年後を見すえる。4店舗目はパンが主体のベーカリーカフェを開きたいそうだ。(文聖姫記者) |