ざいにち発コリアン社会

外国文化交流講座開講

大分・日田市


 大分・日田市では初めての外国文化交流講座が4月27日、スタートした。地域の日本人教師らが中心となっている「ムジゲの会」(会長=渡辺茂則・大分県立森高校教諭)が中心となり、日本の学校に通う在日同胞子女や日本人生徒らを対象に、異文化交流の一環として昨年から準備してきたもの。文化ということで、まずはチャンゴをはじめとする「サムルノリ(四物遊び)」の楽器演奏から始め、徐々にウリマルを学んでいく予定。月1回運営される。

4月から1回、まずはサムルノリ、徐々にウリマルの勉強も

日本人教師らで構成「ムジゲの会」の活動実る

 「ハプタタクンタクン」「ハプハプクンタクン」――。チャンダン(リズム)の音が場内に響き渡る。この日は福岡朝鮮初中級学校と筑豊朝鮮初級学校で音楽の講師をしている金慶姫さんの指導で、約2時間にわたってチャンゴの練習が行われた。参加者は同胞、日本人生徒合わせて9人。

4月27日に行われた「外国文化交流講座」でチャンゴの練習に励む在日同胞生徒たち

 初めてチャレンジする生徒もいるとあって、なかなか難しそうだったが、覚えるに従い楽しくなっていくようだ。

 「疲れた。リズムとかとりにくいと思った」と話すのは市立東部中2年の宋理美さん。1年の金子真菜さんは、「思ったより難しかった。でも楽にできるようになると結構楽しくて、自信がわいた」

 「この部のことをみんなに話したい。部員がいっぱい増えると楽しくなると思う」(川津優美さん、1年)といった感想が聞かれた。

 同講座に対しては市が運営する教育センターの建物内に人権情報センターができることから、その場所が提供される。センターの開所式は6月だが、1日も早くということで、この日のスタートとなった。

 同講座の母体となっているのは、昨年4月にできた市立東部中のチャンゴサークルだ。顧問の小野浩之教諭は「ムジゲの会」メンバーの1人で、開講の準備にあたっても中心的役割を果たしてきた。

 「チャンゴサークルでは本名を名乗っても、普段の学校生活では通名を使っている。在日の子どもたちが自分の出自を正直に言えない状況がいまだにある。それを何とか乗り越えさせてあげたい」

 「周りはみな朝鮮人だと知っているのに、子どもはそれを切り出せない。もっと素直に話せる環境を作る必要がある」と河崎豊次さん(県立日田高校教諭)もいう。

 4月12日に東部中で行われた新入生を迎える会では、異文化を知ってもらう一環として小野先生率いるチャンゴサークルが腕前を披露した。

 同講座の実現には、「ムジゲの会」メンバーたちの長年にわたる地道な活動が背景にある。

 朝鮮語で虹を意味する「ムジゲ」を会の名称にしたことについて、渡辺会長は「近くて遠い国、朝鮮と日本との関係を日田の地から見つめ直し、日本人と朝鮮人の『虹の架け橋』として、教育・文化を通して豊かな出会いを作りたいと思ったから」と話す。

 1994年の結成以来、ハギ・ハッキョ(夏期学校)、トンギ・ハッキョ(冬期学校)の運営などを通じて、市内に100人いると言われる在日の子どもたちが少しでも多く民族に触れ合える場を提供してきた。

 夏には、市内の小学生と福岡朝鮮初中級学校生徒たちのサッカー交流を企画。今年で4年目になる。朝鮮学校の生徒たちが市内の小学生宅にホームステイする形で、幼い頃から違和感なくつきあえる空間も作っている。

 とくに力を入れてきたのが日田川開き観光祭への参加。三隈川の鮎漁解禁直後に開催される日田市最大のイベントで、毎年5月20日過ぎの土、日に行われる。「ムジゲの会」の初参加は97年で、この時はチャンゴサークルと九州朝鮮歌舞団が中心だったが、その後は子どもたちが中心となって参加している。

 仮面舞やサムルノリなど演目もさまざまだが、今や観光祭ではなくてはならない存在として、市民たちに評判だ。 追っかけ もいるほどだという。そのためか、参加を希望する子どもたちも多い。2000年からは福岡の朝鮮学校生徒たちも合流し出演している。

 「子どもたちにとって、互いの異文化を理解し交流するのが出発点」とメンバーの1人、日吉郁也さん(前津江村立赤石小学校教諭)は話す。その中から「朝鮮」に対する偏見もなくなる。在日の子どもたちが自分の民族に誇りを持てるようにもなる。

 今春から始まった同講座がその一助になれば、というのが「ムジゲの会」メンバーたちの思いである。(文聖姫記者)

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