くらしの周辺
「高麗」の季節
毎年この季節に催される楽しい行事がある。「高麗郷野遊会」。
埼玉県日高市にある高麗神社は、1200余年前、朝鮮半島から渡来した高句麗の王族によって切り開かれた高麗郡、その首長若光(じゃっこう)を神として祭った神社である。 焼き物、製鉄、織物など古代朝鮮の進んだ文化、技術を日本に広めたゆかりの地で、毎年わが同胞と日本人が一堂に会し、歴史に刻まれた日本の中の朝鮮文化にふれ、高麗川の清流の辺りで交流を深めるという、いたってシンプルな催し。毎年参加しながらそのつど感じるのは、朝鮮人と日本人が素直にそして自然に交流しあっていると言うこと。あたかも同胞学生たちが刻むチャンゴのリズムに眠りを覚まされた祖先の霊たちが、時空を超えて手と手を取りあわせてくれているかのごとく。 かつて日本の優れた歴史学者である羽仁五郎氏は言った。「古い時代に日本人は朝鮮の人たちの助けで文化、文明をつくったように、現在においてもやはり日本は朝鮮から学ぶというか、朝鮮問題というのを本気に考えて、問題の解決をどの程度深く掘り下げて考えることができるかということによって、日本人として自立することができるんじゃないか」。歴史に学ぶことなしに未来はないという含蓄のある言葉である。 今年も高麗の季節がやってきた。期待をふくらませて行こう。みなさんもぜひいちど春ののどかなひととき、悠久の歴史と一体になられてみては。(崔権一・教員) |