生活相談 きほんの き―1

Q トンポの国籍はどう決まるの

A 北南朝鮮の国籍法
分裂政策とる日本政府 区分にすぎない外登表示


 「ある人がある国の公(国)民であることの資格」のことを国籍といいます。

 在日同胞(ここでは「朝鮮」または「韓国」国籍を持つ者に限定)にとっての「ある国」(本国)とは分断国家とされており、かつ、その一方の朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)と日本との間に国交がないため、ほかの外国人に比べ国籍に関する個々の問題は若干複雑だと言えます。そこで、個々の案件については次回以降に譲るとして、今回は総論的な説明をします。

 はじめに理解しておかなければならないことは、在日同胞の国籍は外国人登録(以下、外登)上の国籍表示によって決まるのではないということです。外登に記載されている国籍欄の表示は、日本政府によって意図的に「朝鮮」と「韓国」の2つに分裂させられています。このことから誤解が生じ、「朝鮮」=朝鮮民主主義人民共和国、「韓国」=「大韓民国」の国籍と勘違いしている人が少なくありません。

 では、在日同胞の国籍はどのように決まるのでしょうか。これについては、「個人がある国の国籍を有するか否かという問題は、その国の法令によって決定する」(1930年のハーグ国籍条約)とする国際法上の原則に従って決められるということになります。

 つまり、ある在日同胞の国籍が、朝鮮の国籍かどうかを決めるのは同国の国籍法であり、「韓国」国籍かどうかを決めるのは、「韓国」国籍法なのです。裏を返せば、在日同胞の国籍を決めるのは北南朝鮮の国籍法であって、日本の法律ではないことを意味します。外登の国籍表示が「朝鮮」であれまた「韓国」であれ、それはあくまで日本の法律である外国人登録法によって区分されるものなので(まして国籍法でもない)、それによって在日同胞の国籍が決まるのではないということです。そして、国籍を証明する文書は、国籍国が発給する国籍証明書(朝鮮は「入籍証明書」、「韓国」は戸籍)または旅券ということになります。

 ところで、解放後54年の朝鮮外相声明によって全在日同胞は朝鮮公民であることが宣言され(「朝鮮中央年鑑(56年版)」P10)、これを受けて63年から施行されている国籍法の規定に従って、在日同胞はすべて「朝鮮」国籍を持っていることになります。

 他方、48年から施行されている「韓国」の国籍法(および「国籍に関する臨時条例」)の規定によって、在日同胞はやはり「韓国」国籍をも有することになります。在日同胞は、両国籍法によってそれぞれ公(国)民と規定され、その結果2つの国籍を有する一種の二重国籍状態にあると言えます。

 しかし、日本政府が、「未承認国家」である朝鮮の国籍法の適用を認めない不当な差別行政を行っているため、在日同胞の国籍取得や喪失など諸問題は、日本の役所ではすべて「韓国」国籍法を適用しての処理がなされています。朝鮮を敵視した日本政府の国籍行政がどうあれ、現在、朝鮮政府の国籍行政により同国籍法の適用を受けて同国籍を取得するケースも出ています。

 祖国の分断により在日同胞の国籍は二重国籍状態にあるとはいえ、実質的には二者択一を迫られる「分断国籍」に過ぎません。しかし、一昨年の歴史的な6.15北南共同宣言の精神を受け、実務の上でも在日同胞の国籍問題は分断思考ではなく「統一朝鮮」の在外公民を想定した扱いが1日も早くなされるべきです。

 具体的には、朝・日国交正常化以前であっても朝鮮とその国籍法を承認し、外登上の国籍表示の統一などが行われるべきと考えます。(任京河・朝鮮大学校経営学部講師)

 各地の同胞生活相談綜合センターに寄せられる相談の中で、国籍に関する相談が増えています。新年度に際し、国籍問題をはじめとする基本的な相談案件をピックアップし、今号からそれぞれの分野の専門家に、平易に解説してもらいます。(編集部)

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