本の紹介
在日1世が語る
李又鳳著
本書は、在日朝鮮人1世の波瀾に満ちた半生記である。著者の李又鳳さん(78)は、総聯秋田県本部前委員長で、今は同本部顧問。花岡中国人殉難者の遺骨発掘と送還運動の先頭にも立った。
1924年、朝鮮南部の慶尚北道・尚州で生まれた李さんは、日本の植民地支配の下で幼少期を送り、18歳の時、強制連行によって日本へ渡った。そして45年の解放を、秋田県花岡町の花岡鉱山で迎える。 本書序章で李さんは、歴史を語ることについてこう書いている。 「…57年が過ぎても、日本では今なお朝鮮植民地支配や中国侵略戦争、太平洋戦争の過ちを認めず、かえってそれを居直り、美化し、歴史を歪曲、改ざんしようとすることがまかり通っている。(中略)最高時260万人、今なお60万人を越す在日朝鮮人がいるのはなぜか。(中略)体験を語り残しておこうと思い立ったのも、その体験が日帝の植民地支配36年の真の姿を事実として暴くものとなると確信するからである」 全5章と補章からなる本書は、第1章「蘇る記憶 心深く刻まれた傷跡」、第2章「朝鮮人の戦争への動員」、第3章「8.15解放 新たな苦難と闘いの日々」、第4章「忘れえぬ人たち 時代を生き抜いた朝鮮人」、第5章「中国人犠牲者の遺骨発掘と故国への送還」、補章「朝鮮植民地化とは何か」から構成されている。 新世紀の幕開けであった昨年、日本では天皇崇拝、戦争賛美のもと、歴史を改ざんした中学校教科書が文部科学省の検定を通過し、8月にはごうごうたる非難の中、小泉首相が靖国神社を参拝した。 本書に書かれている李さんの「生きた体験」は、これら事実をねじ曲げ、歴史を改ざんしようとする者への鋭い反証となる。 |