みんなの健康Q&A
ストレス(中)−関連疾患
脳卒中、心筋梗塞の引き金にも
Q:ストレスが関与している病気にはどのようなものがありますか?
A:心理的あるいは社会的なストレスが発症および病状の経過に大きく関与すると考えられる病気を正式には「ストレス関連疾患」と呼びます。これには、おなじみの胃・十二指腸潰瘍から過敏性腸症候群、過換気症候群、筋緊張性頭痛、円形脱毛症、不眠症を含め31種類の疾患があるとされています。 Q:ずいぶんたくさんありますね。ところで、心身症というのもその仲間ですか? A:最近よく話題になっている言葉ですね。心身症は、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与する場合に使われる言葉です。ですから、心身症という特別な病気があるわけではなく、例えば心理的ストレスで胃潰瘍が発症した場合は「心身症としての胃潰瘍」と書き表されます。一般に病気の多くは社会的・心理的な影響を受けているものですが、特に、神経性皮膚炎、慢性関節リウマチ、気管支喘息、本態性高血圧、消化性潰瘍、潰瘍性大腸炎および甲状腺機能亢進症は、以前から代表的な心身症とされています。もちろん、前記のストレス関連疾患も心身症に含まれるものがあります。 Q:代表的なストレス関連疾患について、いくつか説明していただけますか? A:胃腸系の病気としては、ストレスによる胃・十二指腸潰瘍があまりにも有名ですが、近頃は過敏性腸症候群という疾患に悩む人が増えていると聞きます。これは比較的若い女性に多く、仕事が忙しくなったり、大事な会議や発表といった精神的圧迫を受けると、そのストレスがおなかにくるというものです。すなわち、ストレスがかかると、時と場所に関係なく急に下痢をしたり、あるいは下痢と便秘を繰り返すようになります。これは、もともと下痢をしやすく、おなかをこわしやすい体質の人に多くみられます。このような人の腸は常に緊張してこわばり、蠕動(ぜんどう)が不十分であるといわれています。こういう人に強度のストレスがかかると頻繁に下痢が起きるようになります。しかも、その症状は電車の中だろうが会議中だろうが緊張を感じると突然襲いかかるので、ある種パニック状態になります。そして、1度こういったひどい経験をすると「またあんなことになったらどうしよう」という不安がつきまといます。それがまたストレスとなって発作を誘発し、1日に何度もトイレに駆け込むことになり、日常生活に支障が出るようになります。 Q:社会全体にゆとりがなくなり、家庭や職場でのストレスが増大したことや、食生活の変化も大きく影響しているように思われますが。 A:まさにその通りですね。最近は、男性にもこの病気が増えてきているそうです。また、これ以外にも、ストレスから慢性の腹痛と吐き気に悩まされるという場合もあります。 Q:脳卒中や心臓病の原因となる生活習慣病もストレスと大いに関係があると聞きましたが? A:これらは生命にかかわる病気であり、とても大事な問題です。 まず言えることは、ストレスそのものが脳血管や心筋を流れる冠状動脈を傷害し、脳卒中や心筋梗塞・狭心症を引き起こしやすくします。 また一方では、ストレスを解消しようとして暴飲暴食を続けると肥満になり、さらには糖尿病・高脂血症などの生活習慣病に陥ってしまいます。単身赴任なので帰っても誰もいない、仕事が忙しく不規則なので飲み食いすることに楽しみをもっていってしまう、身体を動かしてストレスを発散するのがおっくうだ、こういった場合は要注意です。 Q:自律神経失調症とか心臓神経症とかわかりにくい病名をしばしば耳にしますが、どういったものなのですか? A:確かに最近では特に珍しいといえなくなっていますね。 自律神経失調症は、体がだるい、よく眠れない、頭痛、めまい、動悸(どうき)、冷え性、多汗などといった比較的ばく然とした症状に悩まされているが、診察や検査を受けてもこれといった特別な異常がない場合にしばしば用いられる病名です。自律神経とは身体のさまざまな働きを自動的に調整してくれる神経のことですが、それだけにストレスにより変調をきたしやすいのです。心臓神経症はいわば自律神経失調症のひとつと考えてもいいでしょう。動悸、胸部圧迫感などの症状のため医師を訪れますが、心臓は何ともなく精神神経的な問題でしょうと言われます。これらは通常生命に関わることはないのですが、根本的治療が難しく簡単に治せないので、治療する側からみてもかえってやっかいです。(東京都足立区平野1―2―3、TEL 03・5242・5800) |